コラム

持続可能な地域経営に向けたDX実践デジタルトランスフォーメーションMaaS

第1回:地域課題解決に向けたデジタル地域通貨の可能性

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2022.1.11

イノベーション・サービス開発本部黒坂多聞

持続可能な地域経営に向けたDX実践

困難化する地域課題の解決

デジタル化の進展にともない世界中で人々のつながりが拡大する一方で、旧来のリアルな結びつきは徐々に希薄化しつつある。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大が、つながりへのさらなる制約をもたらし、希薄化に拍車をかけている。限られた空間やコミュニティ内に閉じて生活することは、多様性を排除し、分断や格差の助長をもたらしかねない。自律分散して生活する個人が地域やコミュニティとのつながりを深め、豊かさなどを実感できる社会基盤を構築することが大きな課題といえる。

日本の地域社会においては、人口減少、高齢化社会の深刻化、財政の悪化、都市・生活サービスの維持など、課題が深刻化している。また、働き手の確保、生産性の向上、地域・社会の持続性の確保などの課題も近年散見されるようになり問題はさらに複雑化している。確かに、行政や民間事業者の取り組みは課題解決に直結する。しかし、公共サービス単体での課題解決が難しくなる状況化では不十分であり、個人の意識・行動変容の重要性が増している。地域の持続可能性を高めるため、今後はこれまで以上に、双方の連携を含む仕組みづくりが求められる。

デジタル地域通貨を活用した地域課題解決例

当社は地域の課題を解決するキーとして3つのファクターを挙げる。

課題1:域内の経済循環促進

地域住民の消費行動は、社会構造変化にともない域内経済の低迷を加速させている。利便性・利得性の高い大都市や周辺地域の商業施設などへの流出、ECサイトを通じた購買へのシフトなどの動きを通じて、地域経済へのダメージも拡大している。行政による域内消費活性化施策においても、域外で消費されたり、ポイントが利用されるケースがあり、原資投入が域内経済循環に直結しないことが課題になっている。

これらの課題解決のためには、特定地域内でのみ発行・利用が可能な「地域限定通貨」の導入は有益と考えられる。地元店舗の利用促進・域内消費の喚起、地域への愛着醸成やキャッシュレス推進を目的に発行されることが多い。近年では、プレミアム商品券を地域内限定で使用可能とし地域経済の振興を図る例が多数みられる。地域限定通貨とすることで、地元店舗での消費や地域店舗間での仕入れが増える一方、域外への消費流出が抑制され、域内の経済循環促進や利便性向上が図られる。

課題2:住民の行動変容・社会活動参加の促進

個人の豊かさの追求は、定住人口の増加や地域ブランディングなどの観点から、地域の持続可能性につながる大きな課題である。そのためには、個人の意識や行動の変容、それを通じた地域の有機的なコミュニティ形成が求められる。

その実現には、SDGs活動や健康増進・環境配慮・ボランティア活動など、いわゆるSocial Goodな取り組みに興味がなかった住民に対して認知・関心をもつきっかけや行動動機の発生を促すことが重要であり、取り組みに貢献した対価を地域ポイント・地域通貨として住民に付与することが、1つの有効な手段となる。

行動経済学的アプローチも有用と考えられる。とりわけ、「ナッジ」的な手段は、人が意思決定する際の環境をデザインすることで自発的な行動変容を促す効果が高いことが知られている。メッセージ配信や活動の見える化などの方法を併用することで、行動変容の最大化が図られる。

このように、継続的な社会的活動の仕組みづくりを通じて、住民の生きがいを創出することが地域社会において求められている。

課題3:福祉サービスの負担軽減・社会参加機会の拡大

自治体サービスとして提供される、高齢者・障害者・妊娠・子育て世帯などを対象とした福祉サービスは、紙券での配布が多い。利用者にとっては紛失する恐れや受取までの手続きが煩雑で負担が大きいこと、自治体においては給付オペレーションに多大な労力がかかることが課題である。

これらのサービス利用券や金券をデジタル形態で発行することで、当事者や介護者、事業者の負担軽減を図ることができる。また、地域商品券・地域通貨や地域ポイントを一体的に提供することで、ライフステージにあった必要な給付や社会参加機会の提供を一元化し、利便性を高めることができる。
上記の課題を踏まえ、未来社会を見つめ、さまざまな地域課題を統合的に解決する必要がある。当社では、ブロックチェーン技術を活用したデジタル地域通貨プラットフォーム「Region Ring®」※1を2017年度に構築し、課題解決の一助となるべく地域通貨の普及促進に取り組んでいる。

本プラットフォームでは、個人の行動変容を促進するアクションや、行政・企業・地域のあらゆるアクションが生み出され、それらの経済的・社会的価値の創出・交換が地域通貨やポイントを通じて可能となる。Region Ring®の社会実装により、健康増進、観光活性化、デジタル行政の推進、働き方支援、SDGs活動支援など、地域に新しいアクションを創発し、地域の価値向上および社会課題解決を推進する。
Region Ring®
出所:三菱総合研究所
本コラムシリーズでは、今後、Region Ring®の具体の実装事例や想定される適用イメージの紹介を通じて、地域課題解決の可能性について紹介していく。①SDGs活動を通じた行動変容、②企業の健康経営、③行動経済学アプローチ(ナッジ)にもとづく行動変容、④観光分野における消費・移動活性化などを取り上げる予定である。

※1:地域通貨・ポイント等の経済的な価値を、ブロックチェーン技術を活用して発行・利用・管理する仕組みをデジタル上のプラットフォームに一元化したもので、さまざまな地域課題を同時解決しながら多様なつながり(=Ring)を広げ、地域の価値向上を促す取り組み。