コラム

持続可能な地域経営に向けたDX実践デジタルトランスフォーメーションMaaS

第2回:Region Ring®による地域活性化とDX促進 ─ 大丸有SDGs ACT5での導入事例紹介

タグから探す

2022.1.20

イノベーション・サービス開発本部中島 聡

持続可能な地域経営に向けたDX実践
第1回コラム「地域課題解決に向けたデジタル地域通貨の可能性」では、当社が提供する地域課題解決型デジタル地域通貨サービス「Region Ring®」が求められる社会的な背景や典型的なユースケースを紹介した。第2回は、経済的なインセンティブとしてのポイント付与により行動変容を促した事例を交えながら、Region Ringの特徴をより具体的に解説を行う。「コロナ禍で商圏活性化に課題を感じている」「エリア関係者に新たな価値提供をしたい」「地域のデジタル化(地域DX)を促進したい」「一般消費者・生活者向けにデジタル施策をクイックに展開したい」といった地域課題を抱える方々に本コラムがアプローチを考えるきっかけとなれば幸いである。

「デジタル」を起点としたタッチポイント創出が地域活性化のカギ

Region Ringの地域通貨・ポイントアプリを実装することにより、対象とする地域内や商圏内の利用者・ターゲット層との非対面での接点構築を行い、リアルとデジタルをシームレスに結びつけることが可能である。実際にRegion Ringを導入した「大丸有SDGs ACT5」の取り組み(図1)では、SDGsというトピックスを通じて、大手町・丸の内・有楽町地区(以下、大丸有エリア)内外の利用者との多様なコミュニケーションが実現されている。
図1 大丸有SDGs ACT5の概念図
図1 大丸有SDGs ACT5の概念図
クリックして拡大する

出所:三菱総合研究所
アプリの主機能としてはSDGsに資する活動・イベントに関するポータルの役割を果たしつつ、活動・イベントに参加したユーザーにはポイントを付与するというシンプルなものである。ユーザーはポイントを利用してSDGs商品と交換を行える。

またプッシュ通知やメッセージ配信を行える機能も備わっている。アプリ利用者にそれらのデジタルチャネルを通じて、活動・イベントへの興味関心の醸成や行動変化の意識づけを積極的に行い、利用者とのコミュニケーションを図った。結果として、利用者がより意欲的に活動へ参加する行動変容効果も明確に確認できた。これはRegion Ringが、デジタルを通じて、リアルの行動を喚起した象徴的な事例と言えるだろう。行動変容を誘発したメッセージの具体内容とその効果詳細については、後続の連載にて、より詳しく紹介したい。

独自データを取得しエリア利用者の理解を深める

顧客との接点となるRegion Ringを通じて、利用者に関する豊富なータを事業者が独自に得ることができる。顧客理解の深化や、サービスのパーソナライズが重要視される昨今において、利用者の属性データにとどまらない利用実績に基づくデータや、行動に表れない潜在的な意向データを把握できるRegion RingはDX推進の文脈でも強力なデータ分析の土台となるのではないか。

例として、「大丸有SDGs ACT5」では活動・イベントへの参加実績に着目して、「幅広いSDGsテーマへの関心層」(図2 Group1:SDGsマスター層)、「特定のSDGsテーマでの活動層」(同Gropu2:SDGsライト層)、「1回のみの活動参加に留まる層」(同Group3:SDGsエントリー層)などのグループが存在することを確認し、グループ単位の利用者特徴や、活動回数が増えていく利用者の特徴・きっかけに関する理解を深めた。例えば、「SDGsマスター層」では、大丸有勤務者の女性が多く、平日の仕事合間に取り組み可能な活動を中心に、対面型のセミナーなどにも積極的に参加するといった特徴が見受けられた。また、同層では、活動を通じて勤務地周辺への愛着がより湧いたという声も多く、地域へのロイヤリティ向上も確認できた。
図2 大丸有SDGs ACT5におけるアプリ利用者の特徴
図2 大丸有SDGs ACT5におけるアプリ利用者の特徴
クリックして拡大する

※活動・イベントに参加したアプリ利用者1,252人について、2021年5月~11月の実績でグループ分け

出所:三菱総合研究所

クイックな施策展開によるDX加速

前節にて確認した個々のグループに対して、それぞれの状況に応じて施策を出し分けることはもちろん、データを起点としたクイックな施策検討・実施が行えることもRegion Ringの大きな強みである。従来の施策実行プロセスは「綿密な検討期間を経て施策を行い、施策期間が終了するのを待ってから、成功点・反省点を確認して次の施策へ生かす」ことがスタンダードであった。利用者の日々の活動状況を時々刻々とモニタリングできるRegion Ringでは、実行中の施策に対する反応や実績データを確認しながら迅速に「次の手」を検討し、打ち出していくことが可能である(図3)。

大丸有SDGs ACT5における1例としては、モニタリングに基づくレコメンドがある。SDGs活動・イベントの参加状況やSDGs商品の特典の交換状況などをリアルタイムに確認しながら、活動・イベントへの参加が停滞しているユーザーを見極め、活動の再開や特定のSDGs商品への交換を促すようなメッセージを配信することで、SDGs活動を促進する運営に生かすことができた。
図3 データ起点でのクイックな施策展開イメージ
図3 データ起点でのクイックな施策展開イメージ
出所:三菱総合研究所
デジタルを起点として、リアルな行動・消費を喚起するためには、「より必要とされる情報・機能を、必要なタイミングで、必要なユーザーに届ける」ことが重要だ。Region Ringでは、強みである経済価値の管理(ポイント・通貨管理機能)に加え、独自に取得できるデータを活用することで、より一層、地域活性化に向けたインサイトや方針をあぶり出し、打ち手へテンポよくつなげることが可能である。

関連するサービス・ソリューション

連載一覧

関連するナレッジ・コラム