私たちはさまざまな体験を通して日々の生活をより豊かなものにしている。新型コロナウイルスの感染拡大はそうしたさまざまな体験、特にリアル体験に著しい制約をかけた。一方、デジタル技術がそれを補い、リモートワークやビデオ会議、動画配信、料理配達など便利なオンラインサービスが普及し、人々の生活様式を大きく変えた。
オンラインサービスがリアルサービスを補い、自身の移動を伴ってリアル体験を得る行動機会は減少したかのように思われる。しかし、その一方で私たちはコロナ禍の経験を通して、リアル体験の重要性をあらためて実感したのではなかろうか。新型コロナウイルスの国内感染者数が比較的少なかった2021年年末から2022年年始において、初詣のにぎわいや旅行・帰省者数が前年を大きく上回る報道を数多く目にしたのはその証左だ。
リアル体験を含む多様な行動機会を充足することで、人々のウェルビーイングは高めることができる。MRIが実施した調査では、さまざまな行動が充実している人ほど、総じて生活に対する満足度が高いという結果を得ている。例えば、30代女性は余暇や安全安心、60代男性は健康に関する行動充足ニーズが高い。また、年代によらず半数の人が行動の契機となる情報やサービスの充実を求めている。
では、こうした人々が希望する行動機会を充足するために必要なものは何か。MRIでは、その鍵となる「actfulness」の概念を提案する。