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人々のウェルビーイングと企業・地域の価値を高める「actfulness」

四つの価値で行動の可能性を広げるポストMaaSの姿

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2022.3.14

株式会社三菱総合研究所

MaaS
株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:籔田健二、以下 MRI)は、デジタル技術の急速な進展に加え、コロナ禍で働き方や暮らし方の変化が加速する中、人々が多様な行動機会を充足することでウェルビーイングを向上させる「actfulness」の概念を提言します。そして、その概念を具現化するサービスの提供がもたらす企業・地域の価値向上効果を試算しました。

リアル体験を得るための行動充足ニーズは減らない

私たちはさまざまな体験を通して日々の生活をより豊かなものにしている。新型コロナウイルスの感染拡大はそうしたさまざまな体験、特にリアル体験に著しい制約をかけた。一方、デジタル技術がそれを補い、リモートワークやビデオ会議、動画配信、料理配達など便利なオンラインサービスが普及し、人々の生活様式を大きく変えた。

オンラインサービスがリアルサービスを補い、自身の移動を伴ってリアル体験を得る行動機会は減少したかのように思われる。しかし、その一方で私たちはコロナ禍の経験を通して、リアル体験の重要性をあらためて実感したのではなかろうか。新型コロナウイルスの国内感染者数が比較的少なかった2021年年末から2022年年始において、初詣のにぎわいや旅行・帰省者数が前年を大きく上回る報道を数多く目にしたのはその証左だ。

リアル体験を含む多様な行動機会を充足することで、人々のウェルビーイングは高めることができる。MRIが実施した調査では、さまざまな行動が充実している人ほど、総じて生活に対する満足度が高いという結果を得ている。例えば、30代女性は余暇や安全安心、60代男性は健康に関する行動充足ニーズが高い。また、年代によらず半数の人が行動の契機となる情報やサービスの充実を求めている。

では、こうした人々が希望する行動機会を充足するために必要なものは何か。MRIでは、その鍵となる「actfulness」の概念を提案する。

四つの価値提供により多様な行動を実現

actfulnessは、「都市空間や時間をより豊かに活用して人々と都市機能・交通に関する各種サービスをつなぐことで、一人ひとりの価値観や生活環境に応じて行動機会の創出や行動の価値を向上させる」という概念であり、個々人のより良い生活・人生を実現するものである。そして、actfulnessサービスは、その概念を具現化するため各種サービスをつなげて人々に提供されるものである。

actfulnessサービスが人々にもたらす価値は四つだ。「新発見(New)」「望みの実現(Wish)」「期待以上の価値の実感(Great)」「困りごと解決(Smooth)」である。

個々人が望む暮らし方や生き方は多様であり、また日々の目まぐるしい生活の中で本人がやりたいことを自覚しているとは限らない。時には潜在的な行動ニーズの掘り起こしにより新たな行動を喚起し、それが思いがけない「新発見」をもたらすこともある。これが一つ目の価値である。また、いつかはやってみたかった「望みの実現」、実際にやってみた時の「期待以上の価値の実感」をもたらすこともactfulnessサービスの重要な提供価値である。これら三つの価値は、いずれも新たな行動の喚起や個々の行動の価値を高めるものであるが、最後の「困りごと解決」は、日常生活を効率化して、より価値の高い行動実現のためのゆとりを創出するものである。これら四つの価値が複合的に発現することで、日々の多様な行動機会が充実し、ウェルビーイングを高めることができる。

actfulnessの実現は企業・地域の価値も高める

人々の行動の可能性を広げるactfulnessの実現には、人々が期待する各種体験を提供する事業者やその実現に必要な移動を提供する事業者など、異業種間の連携・融合が必要になる。

サービスの利用者である一人ひとりがその効果を認識するため、そして、さまざまな事業者が共通の目標をもって強固な連携のもとで取り組みを進めるためには、効果の「見える化」が大切である。なお、ここで言う効果には、住民のウェルビーイング向上とともに、企業の事業利益や地域のGDPのほか、企業に対する社会からの信認、地域での人口集積などがあげられる。特に住民・企業・地域が同じ方向感を持ち、より良い地域社会を作り上げていくためにも、効果の見える化が一層重要になると考える。

上記のサービス効果の測定を行うことの重要性に鑑み、MRIはサービス効果の測定プロセスを構造化するとともに、定量分析モデルの構築を進めている。今回は、仮想のactfulnessサービスを設定して行動機会の充足や経済的な効果を試算したところ、先に紹介した30代女性が望む余暇行動について、サービスを受けることで余暇行動の頻度が5.5%増加し、余暇に関する家計支出が6%程度増加するとの結果となった。

actfulnessは人々の行動の可能性を広げ、ウェルビーイングを高めるものだが、都市機能・交通サービスを提供する企業や地域にとっては、新たな需要創造を含め、人々の多様な行動ニーズを満たすサービス提供のビジネスチャンスであり、企業や地域の価値を高める契機となるであろう。ぜひ、本提言がactfulnessの実現を通して、人々のウェルビーイングと企業・地域の価値を高め、豊かな社会を創る一助となることを期待している。

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