マンスリーレビュー

2021年11月号

MRIマンスリーレビュー2021年11月号

カーボンニュートラルを社会変革の核に

執行役員 小川 俊幸
今年のノーベル物理学賞は、日本出身の眞鍋淑郎・米プリンストン大学上席研究員らに授与された。物理法則をもとに、大気中の二酸化炭素濃度が気候に与える影響を解明した功績が認められての受賞である。

8月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書でも、人間活動が温暖化に及ぼす影響については「疑う余地がない」と断定された。こうした中、温暖化の影響を軽減するために、全世界でカーボンニュートラル(CN)を推進する動きが活発化している。

CNは、エネルギー・環境分野の技術開発・普及の促進にとどまらず、エネルギー負荷の高い製造プロセスの改編など企業活動に変化をもたらす。さらに、高度なサーキュラーエコノミーとの連携で需要家としての行動変容を加速し、私たちの働き方・暮らし方も変える。各地域で太陽光や風力など再生可能エネルギー施設の導入とともに周辺開発が進むと、自然災害に対する防災対策も見直しが必要となろう。

言うなれば、CNは環境政策の枠に収まらない壮大な取り組みであり、経済の好循環を誘発し、社会を変革する力をもつ。期待される効果の最大化に向けて、CNをこれからどう進めるかといった具体的な戦略の構築と、課題をチャンスと捉える前向きな姿勢が必要だ。

もっと見る
閉じる

バックナンバー