マンスリーレビュー

2021年11月号トピックス1MaaSスマートシティ・モビリティ

自動運転の先にあるモビリティ・デジタルツイン

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2021.11.1

スマート・リージョン本部佐藤 賢

MaaS

POINT

  • 自動運転はこれからさらに高度化し、社会に浸透。
  • 今後の鍵はコネクティッド。自動車が情報インフラとつながる。
  • 今は、モビリティのデジタルツインの萌芽(ほうが)が見えてきたところ。

まだまだ高度化の余地がある自動運転機能

自動車の標準機能として自動運転が浸透している。人による対応が必要であるものの、高速道路の本線に入ってから出るまでほぼシステムに運転を任せることも可能となっている。

しかし、好天候かつ車載カメラが白線を検知できる区間などの限られた条件下にとどまる。現状では運転から目を離すことはできず、悪天候時や分合流などの複雑な線形などにも対応できていない。まだまだ完全に安心・快適とは言い切れない。

コネクティッドが鍵となる

自動運転をさらに安心して利用可能にするためには、コネクティッド機能、つまり自動車と情報インフラがつながることが必須となる。

現状、自動運転向けの詳細な地図情報と自車位置情報をもとに道路形状を把握して走行することまでは可能だ。今後は、車線規制や事故など、自車センサーでは把握できない動的な情報の提供も実現するだろう。将来的には、自動車へ情報を提供するだけでなく、自動車に搭載した各種センサーが車内外の情報を収集し、自動車同士が情報を交換するようになる。

モビリティ・デジタルツインの萌芽

自動車産業などが進めるスマートシティ構想においては、MaaS※1の実証などを通じてコネクティッド機能を実現するサービス基盤(プラットフォーム)の実用化が進み始めている。

自動運転により人が運転からある程度解放されることをきっかけに、車内空間での生活の自由度が高まる。従来、スマホなどに提供されてきたエンタメ情報1つをとっても、移動目的と合わせたコンテンツに拡張されるなど、新たな空間・時間利用の可能性は拡大する。例えば、音楽フェスへ向かう車内では出演アーティストの予習が可能なコンテンツやプレイリストが音だけでなく映像で提供されるようになるだろう。

さらに、自動車の情報が都市全体の「デジタルツイン※2」につながることで、リアル社会の自動車や交通に関わる全ての情報がデジタル社会にトレースされる。例えば、自動運転車が移動センサーとなることで、車道の交通状況や道路インフラの状態に加え、沿道の人の流れや施設の状況、地域の異常(災害、犯罪)などもモニタリング可能となる。この結果、都市の情報収集機能は高度化され、課題対応力の向上にも寄与するだろう。

シームレスなプラットフォーム実現を

実現に向けては、プラットフォームを介してあらゆる情報が流通し利活用される仕組み、さらには、多様なプラットフォームがシームレスにつながるシステム・オブ・システムズ(SoS)の考え方が重要となる。それにより、道路や自動車分野以外の産業分野でも、斬新なアイデアさえあれば新規参入できる余地が生まれる。

自動運転を中心に広がる新たな情報ビジネスの展開が、より豊かな生活・自由な移動をもたらすだろう。

※1:Mobility as a Service(移動のサービス化)。

※2:リアル空間で収集したデータをもとにデジタル空間にリアル空間の複製を再現する技術。