マンスリーレビュー

2021年11月号トピックス2経済・社会・技術人財

新しい働き方「在宅勤務」定着の鍵

2021.11.1

未来共創本部高橋 寿夫

経済・社会・技術

POINT

  • コロナ禍で急増した在宅勤務には、働き方を変えるとの期待感がある。
  • 自由度向上の半面、会話減少や新たな気付き阻害などデメリットも散見。
  • 相手の顔が直接見えない在宅勤務こそ「心理的安全性」確保が必要。

コロナ禍で経験者は4割近くに

コロナ禍により在宅勤務経験者は急増した。当社のmif(生活者市場予測システム)を用いた毎年6月のアンケート調査※1によると、2019年に13%だった在宅勤務経験者の比率は2020年には約3倍の38%に達した。2021年はそこからほぼ横ばいとなっている。

在宅勤務は、従来の働き方が変わることへの期待感もあり、ポストコロナの新常態になっても続くと予想される。調査結果を踏まえ、その定着に向けたヒントを探りたい。

メリットのみでなくデメリットも顕在化

2021年のmif調査では、働き方に対する満足度の変化に関する20項目の質問をした。ほぼ毎日在宅勤務を行う人の満足度変化を確認するため、調査時点で勤務場所の90%以上が自宅と回答した777人を対象として集計を行った。満足度が向上した項目は上位から、「通勤の時間や手段」が67%、「身だしなみ」が57%、「仕事の進め方の自由度」が48%であった。

一方で、満足度が低下した項目は、回答の多いものから順に「同僚等とのコミュニケーションの頻度」が47%、「セレンディピティ(予期せぬいいことの発見)に結びつくコミュニケーションの頻度」が27%、「OJT研修の充実度」が27%となっている。

在宅勤務は働き手にとって、通勤が不要になり仕事の自由度が増すなどの恩恵がある一方で、コミュニケーションの減少を招き、新たな発見機会が失われているようだ。

「心理的安全性」が鍵に

こうした負の効果を減らすには、自発的にさまざまな人に話しかけ、新たな気付きを得て学ぶような自律的活動を行えるようにする必要がある。こうした活動は、組織内で自身の考えを安心して発言できる状態を指す「心理的安全性」が担保されてこそ実現できる。

リアルでは直接、相手の顔色や様子を気にしながら話せるが、在宅勤務ではなかなか難しい。顔が見えないことで言いたいことが言えなかった経験のある人も多いのではないか。

在宅勤務での心理的安全性を創り出すには、雑談や上司と部下の1on1コミュニケーションが可能な、気兼ねなく話せる「場」を設けることが必要だと言われ、取り組む事例も増えている。

例えば京都府庁では、働き方改革も視野に入れ、1on1コミュニケーションの定着を目指して、人材育成・研修を手掛ける企業や大学などと連携した取り組みを試みている。また、メンバーを引っ張るリーダーの「聴く力」の向上に着目した企業への支援サービスも出てきている。

こうした取り組みにより、心理的安全性が確保されれば、在宅勤務でも自律的に動くための「最初の一歩」を踏み出すことができる。その結果、「在宅勤務」の負の側面を少なくすることができるのではないだろうか。

※1:会社や団体の代表者・役員、正社員・職員に、公務員、嘱託社員・契約社員、派遣社員、パート、アルバイトも含めた幅広い層1万4,878人を対象として集計した結果を提示している。