マンスリーレビュー

2021年11月号特集3サステナビリティエネルギー

カーボンニュートラルで加速するサーキュラーエコノミー

2021.11.1

サステナビリティ本部鵜飼 隆広

新井 理恵

サステナビリティ

POINT

  • 循環型の産業構造・社会様式変革への対応が急務に。
  • 脱炭素に資する金属資源の獲得競争激化により二次資源へシフト。
  • 化石燃料由来プラスチックの代替、循環利用が加速。

サーキュラーエコノミーが加速

2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向けて再生可能エネルギーの導入や電化の加速など大きな社会変革が起こると見込まれる。これらCNの実現とあわせて、EUなどを中心に強力に推し進められているのが「サーキュラーエコノミー(循環型経済、CE)社会への移行」である。

CEとは従来の廃棄物処理・リサイクルを中心とした資源循環の考え方とは異なり、素材選択・製造の在り方、消費の様式など、製品・サービスのライフサイクル全体で循環の思考を取り入れようとするものである。従来環境志向の高い取り組みとみられてきたが、SDGsの浸透などによる人々の価値観の変化やサステナブルファイナンス※1の拡大などを受けて、CEの実現に資する商品やサービスを提供すれば、ブランド価値だけでなく、財務価値、企業価値の向上につながるという認識が広がりつつある。

また、これまではCNとCEそれぞれが個別に最適化を目指しているという傾向がみられたが、今般2050年のCN実現という具体的な目標が示されたことで、これらが相互に関係性を強め結果的にCEが加速するという様相を呈してきている。

すなわち、①CNを実現するための手段として炭素負荷を下げる効果のあるCE型の取り組みが推進される、②CN達成に向けた取り組みによって資源制約が顕在化してCE自体の重要性が高まるという2つの側面に着目すべきである(図)。

以下、金属資源、プラスチックを例にCE加速化のシナリオについて考察する。
[図]カーボンニュートラルによるサーキュラーエコノミーの加速
カーボンニュートラルによるサーキュラーエコノミーの加速
出所:三菱総合研究所

金属:二次資源の価値が転換

金属資源においては、以下のようなシナリオの下でリサイクルにより得られる二次資源への供給・利用を前提とした産業構造へのシフトが起こると考えられる。

1)脱炭素に必要な銅・レアメタルなどの資源獲得競争の激化に伴う供給リスクの増大や価格の高騰により二次資源の経済性や供給安定性が相対的に高まると予想される。また、カーボンプライシング※2の導入により、採掘・素材製造段階で炭素負荷の大きい金属はさらに価格が高騰し、二次資源が天然資源に対して価格優位性をもつようになる※3

2)資源制約の顕在化、炭素負荷の小さい金属資源への需要増に伴い、二次資源の天然資源に対する相対的な価値が高まり、価値の転換が起こる。

3)金属資源を用いるあらゆる産業において、二次資源をサプライチェーンに取り込むような構造変化が起こる。品質・コスト・供給の各側面において二次資源の市場優位性が増す。

このように、それぞれの重要性をもってCNとCEを推進することで、二次資源の供給・利用のサプライチェーンの重要性が増し、関連産業全体が循環型の構造にシフトする。

プラスチック:脱化石燃料化がCEを加速

プラスチックは燃焼に伴いCO2を排出することから、CNを契機にプラスチックの燃焼回避への社会的要請がさらに高まることが想定される。このため、プラスチックのバイオ由来資源や他素材への代替が進むとともに、代替できない部分については燃焼回避のためのリサイクルが進展する。

また、プラスチックは石油精製時の副生品であるナフサが主原料であるが、CN実現に向け脱化石燃料化が進むことで、従来型の石油精製事業は生産方式の大転換を迫られる可能性がある。一方で、汎用(はんよう)品であるプラスチックのニーズ自体は増え続けるため、将来的には化石燃料由来ではないプラスチックの供給不足が予想される。

このようなシナリオの下で、まず目指すべきは使い捨てないライフスタイルやビジネスモデルを極限まで浸透させることであろう。そのためには需要家である消費者の行動変容が鍵となる。

あわせて、プラスチックのバイオ由来資源や他素材への代替が求められるが、技術開発や普及には時間を要する。

また、バイオリファイナリー※4の持続可能性(食料、燃料用途との競合や生物多様性毀損(きそん)への懸念)には課題も多い。このため、バイオ由来資源への転換とあわせて、燃焼回避および将来的な資源制約の観点からも、現状では国内で2割程度にとどまるプラスチック資源の循環利用が今後一層求められる。

このように、CNを契機としてCE型の産業構造・社会様式への変革が加速し、社会における価値観も変化する中で、企業においてはその対応が急務となるであろう。

※1:持続可能な未来のために資金を活用する手法。

※2:炭素に価格を付けて取引などに反映させる仕組み。

※3:欧州バッテリー規則改正案ではバッテリーのライフサイクルCO2の上限値を設けることを検討中。素材の炭素負荷が商取引に大きく影響を及ぼすと想定。

※4:バイオマス資源からプラスチックなどの化学品を製造するプロセス。

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