マンスリーレビュー

2023年8月号

MRIマンスリーレビュー2023年8月号

人的資本経営 失われた40年の回避

専務執行役員 岩瀬 広
2023年上半期国内の自動車新車販売台数は前年同期比17.5%のプラスに転じた。コロナ禍を抜けた国内外の需要回復とともに、半導体不足の緩和が背景となったようだ。

半導体は自動車産業のみならず、多くの産業にとって必要な要素である。社会を大きく変える生成AIの活用でも、高速大量処理を可能とする半導体が鍵を握る。国内増産に向けて半導体を設計・製造する人材や、AIを使いこなす人材の確保が重要な課題だ。

半導体やAIに限らず、人材は企業にとっての貴重な資本である。企業はその価値に対価を支払うが、失われた30年間、対価の水準は適切だったのか。連合の発表では、今年の春闘の賃上げ率は平均3.58%で30年ぶりの高水準という。長らく停滞してきた日本経済の浮揚には、「生産性向上→賃金上昇→経済活性化」の好循環が欠かせない。5月に政府が発表した「三位一体の労働市場改革の指針」には、この好循環を目指すための改革がうたわれている。

人的資本経営の本質は、人のもてる価値を企業が最大限引き出すこと、それにより個人と企業が相互に価値を高め、社会の発展に寄与することだ。このためには、日本の硬直的な労働市場を流動化させることが必須である。後年、「失われた40年」と言われないための改革を今こそ実現する時だ。
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