マンスリーレビュー

2020年12月号

MRIマンスリーレビュー2020年12月号

巻頭言|岡目八目

研究理事 亀井 信一
シンクタンクの研究活動を通じて、日常的に外部の方々と意見交換を行っている。その中で、ハッと気づかされることがある。業界の中にいると見えなくなってしまっている。まさに岡目八目。最近では以下のようなことがあった。

一つは、「シンクタンクが潮流をつくり出せるなどと考えるのは、驕(おご)りそのものだ。潮流は決して人間の力でつくり出すことなどできない。黒潮や親潮をつくり出すことはもちろんのこと、そのルートを変えることすらできないではないか。潮流は生み出すものではなく、じっと観察し読み解くものだ」というものである。ごもっとも。

2点目は、「近年、エビデンスに基づく政策立案(Evidence - based Policy Making:EBPM)という考え方が浸透してきたが、その手法の中で最も価値が低いのは専門家との意見交換であり、これは内閣府の指標としても明示されている」。これを専門家との意見交換会で指摘されたのはご愛嬌か。とかくわれわれは有識者の声を聴くことにより自身の主張を正当化したがる。これへの戒めでもある。

3点目は、「日本のシンクタンクの研究員やコンサルタントは、極めて均質で一定のレベルの人財の特殊な集団である。その分布は、世間のそれとは大きく異なっている。従って、シンクタンクで考えたことが、世間の考えと一致していると無条件で考えてはいけない」。確かに、当社の未来社会提言研究で実施した社会実装の成功事例・失敗事例の調査では、当社の研究員・コンサルタントと市民の間で成功・失敗を評価するときに重視するものはまったく違っていた。

とかく井の中の蛙になりがちな自分たちを正してくれるのは、外部の方々である。当社は創業50周年を経て新しい50年に向けてスタートを切った。次の世代のためにも肝に銘じたい。
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