マンスリーレビュー

2018年11月号

MRIマンスリーレビュー2018年11月号

巻頭言|自助、共助が根付いた社会へ

副理事長 本多 均 
今年も各地が激甚災害に見舞われている。あらためて脆弱な国土について考えさせられ、懸命に立ち上がる被災者や献身的に支援する市民、多くのボランティアの姿に心を打たれた。本誌10月号特集で自助、共助、公助のバランスやICTによる住民と行政のコミュニケーションの重要性を提言しているが、とりわけ国土強靱化のための防災施設・サービスや地域包括ケアによる医療・介護サービスが効果的に機能するには自助、共助が不可欠だ。

しかし、ハザードマップを見聞きしたことがない人や、特定健診の非受診者など自らの安全や健康に無頓着な人が半数にも及ぶのが、今の実態だ。年間を通して地域ボランティア活動にまったく参加していない人が74%に上り、コミュニティーの維持が困難となる地域もある。長年にわたり公的サービスが拡充される中で、公助に頼り、いつしか自助、共助の意識が薄れたのではないだろうか。公的施設やサービスの充実を求める声は増す一方だが、それらが十分に機能するためにも、一人ひとりが自ら守り、ほかを支えるという基本に立ち返ることが求められている。

メディアから繰り返し流れてくる「経験したことのない大型台風」やカーナビでの「事故多発地点」情報は、市民の安全意識を喚起するのに役立った。ハザードマップや耐震性などが不動産情報に追加され、ICT、AI、IoTなどを活用した避難誘導経路がカーナビに提供されれば、その効果はより高まる。日々脅威が増すサイバー攻撃への対応や健康への対策に関する企業などの社員教育も、自助意識を高めよう。地域コミュニティー活動への社員参加に対する企業支援は、社員の地域理解や共助意識を育む。30~40歳代の女性の40%弱が地域ボランティア活動に参加しているというが、こうした動きをより拡大し共助意識の底上げにも寄与する働き方改革にも期待したい。

各方面でこのような取り組みが加速され、自助、共助が当たり前の意識・行動として根付き、より安心して暮らせる社会としたいものだ。
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