日本の医療システムは、国民皆保険制度と現物給付、フリーアクセスの三つに特徴づけられる。この仕組みは、戦後10数年で形づくられ、以後、改良が重ねられてきた。長年にわたり高品質で低コストの医療サービスにより国民生活を支え、国際的にも高い評価を得てきたが、半世紀を経て見直しを迫られている。
1961年の皆保険制度発足時と現在では、医療を取り巻く環境が大きく異なる。まず、疾病構造が大きく変化した。結核による死亡率が20分の1に減少する一方、悪性新生物、糖尿病、心疾患など慢性疾患による死亡率は2~3倍に膨れ上がった。
慢性疾患はさまざまな病気を併発することが多く、完治することは少ない。また、明確な診断が困難で、治療方針も患者一人ひとりの生活観や人生観を考慮した上で決定する必要がある。そして、何よりも、患者が自ら日常生活を適正に管理しない限り、症状の改善は難しい。したがって、医師が患者に指示するより、患者の意思を医師がサポートする方が医療サービスはより円滑に利用できるはずである。しかし現在のところ、患者の自律性や主体性を尊重した医療が十分に提供されてはいない。
一方、勤務医の過酷な労働実態も看過できない。人口当たりの医師数は諸外国に比して見劣りするわけではない。病床数が極めて多いために、一人の医師が担当する患者数が多くなり、それが負担を増加させている。本来、診療所が対応すべき症状の軽い患者が病院の外来に流れていることも勤務医の忙しさを増幅させている。
日本の医療システムは優れているがために、かえって根幹からの見直しを行いづらく、これからの高齢化による医療需要のさらなる増加、慢性疾患の増加、医師の偏在などに対して適応不全に陥ってしまう恐れがある。
1961年の皆保険制度発足時と現在では、医療を取り巻く環境が大きく異なる。まず、疾病構造が大きく変化した。結核による死亡率が20分の1に減少する一方、悪性新生物、糖尿病、心疾患など慢性疾患による死亡率は2~3倍に膨れ上がった。
慢性疾患はさまざまな病気を併発することが多く、完治することは少ない。また、明確な診断が困難で、治療方針も患者一人ひとりの生活観や人生観を考慮した上で決定する必要がある。そして、何よりも、患者が自ら日常生活を適正に管理しない限り、症状の改善は難しい。したがって、医師が患者に指示するより、患者の意思を医師がサポートする方が医療サービスはより円滑に利用できるはずである。しかし現在のところ、患者の自律性や主体性を尊重した医療が十分に提供されてはいない。
一方、勤務医の過酷な労働実態も看過できない。人口当たりの医師数は諸外国に比して見劣りするわけではない。病床数が極めて多いために、一人の医師が担当する患者数が多くなり、それが負担を増加させている。本来、診療所が対応すべき症状の軽い患者が病院の外来に流れていることも勤務医の忙しさを増幅させている。
日本の医療システムは優れているがために、かえって根幹からの見直しを行いづらく、これからの高齢化による医療需要のさらなる増加、慢性疾患の増加、医師の偏在などに対して適応不全に陥ってしまう恐れがある。