マンスリーレビュー

2018年11月号トピックス2スマートシティ・モビリティ

「SDGsアプローチ」で地域課題の一斉解決を

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2018.11.1

地域創生事業本部魚路 学

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 地域経済を活性化させ雇用を創出する鍵は、官民連携と異業種連携。
  • SDGsという共通目標が複数の課題解決に貢献。各種連携も促す。
  • SDGsに関心が高まっている今こそがイノベーション創出の好機。  
少子高齢化が進む地方自治体においては、人口流出に歯止めをかけるべく、新たなビジネスを生み出し、雇用を創出する必要がある。そのために、国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)を共通の目標に掲げて、官民あるいは異業種間で協調・協業する「SDGsアプローチ」を提案したい。

SDGsは17の目標(169のターゲット)からなる、世界中のあらゆる地域の社会課題を2030年までの15年間で一斉に解決するための開発目標である。日本における地域課題の解決に向けては、目標(ゴール)を実現するための課題を要素分解し得られるビジネス機会を探るアプローチとして、有効に活用することが重要になる。

ここでは、官(自治体)に「ゴール設定と課題分解の担い手」、民間企業に「複数のビジネスを統合し異業種間連携を図る旗手」という実務者と別々の役割が求められる。例えばある自治体で、「質の高い教育をみんなに」をゴールに掲げる地域があるとする(図)。自治体はこの課題を「個々の子どもに応じたきめ細やかな指導」や「地域の強みを生かした学習環境づくり」に分解する。前者は、「AIなどを活用した教材」と「ICTを活用した遠隔教育」、後者は「自然を生かした都市部の子どもたちの体験教育旅行」という民間のビジネスに結びつく。

これらの解決策の並走による相乗効果で異業種間連携を促し、「ICTを活用して都市と地域の子どもたちの長期的な交流機会を創出」という発想が生まれる。単に課題を個別に解決するだけでは異業種間連携は進まないが、複数の課題を横断的に解決することで新たなビジネスの芽が生まれることになる。たとえ課題が分解され複数になっても、SDGsという共通のゴールがあれば帰結を違える懸念は少ない。

2018年8月には内閣府が事務局となって設立された「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」において、官民関係者間の情報共有に加え、官民のビジネスマッチングの支援が開始された。SDGsへの関心が高まっている今こそが、地域課題を解決する新たなイノベーションを生み出す好機といえる。
[図]SDGsアプローチの例