マンスリーレビュー

2023年2月号

MRIマンスリーレビュー2023年2月号

カーボンニュートラル資源立国への挑戦

理事長 小宮山 宏
製品と原料の価格の比はビジネス戦略のポイントだ。電線では1.2。銅と被覆材の価格を足して1.2倍すれば売価だ。ポリエチレンや鉄鋼など、汎用(はんよう)品は2倍以下だ。他方、ハイブリッド自動車は10、ロボットは20から30。高機能材料は、ほとんどが10以上、100以上も珍しくない。

リチウムイオン電池や太陽電池などが1.5程度であることはあまり知られていない。カーボンニュートラル(CN)に欠かせない主要デバイスは、すでに汎用品なのだ。汎用品の戦略は、原料を安く手に入れ、投資し続けて規模と生産性の競争に勝つことだ。

さて、今の日本でCNに向けてどういうビジネス戦略があるだろう。メーカーでもリース会社でもよい、消費者に所有権を移さず、企業が所有権をもつ。その方が、メンテナンスやリプレースが容易だ。製品価格の7割が原料費だから、製品を購入してリースをしてもビジネスは成り立つだろう。

新規製品も同様だ。ペロブスカイト太陽電池は軽くて安くて、壁にも貼れる。しかし、効率はいまひとつで寿命も短い。完成には少し時間を要するが、ただちに事業を始めよう。壁や畑に設置して、劣化したら交換し、分析して改良につなげる。「製品が完成したら販売だ」では世界のスピードにまた負ける。事業をしながら改良していこう。
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