マンスリーレビュー

2023年2月号トピックス1防災・リスクマネジメントデジタルトランスフォーメーション

動き始めた官民共創による「防災DX」

2023.2.1

セーフティ&インダストリー本部船曳 淳

防災・リスクマネジメント

POINT

  • 災害大国日本の防災分野ではDX以前にデジタル化を。
  • 防災デジタルプラットフォームを官民で共創。
  • 防災DXは平時・有事両用の複合的価値を提供する。

災害大国日本でこそ防災デジタル化が急務

DXで世界の後塵(こうじん)を拝する日本。防災分野でもしかりである。例えば近年、風水害や地震などが頻発・激甚化する中、避難所の開設・運営などでは、既存の防災情報システムを活用しながらもファクシミリなどの紙書類が飛び交っている。

情報共有の遅れは逃げ遅れや被害の拡大に直結する。首都直下地震や南海トラフ地震も想定される災害大国日本の防災分野では、まずはDX以前にデジタル化を進めることが急務だ。

官民データ連携基盤でDX推進が加速

こうした状況を受けて内閣府は、2024年度から運用を開始する次期総合防災情報システムを、関係省庁のみならず自治体などにも利用可能にするとともに、情報の集約・加工・共有機能などの高度化を推進する。

デジタル庁も、個々の住民などが平時・有事の区別なく迅速かつ的確な支援を受けられるよう、官民データ連携基盤の構築に着手した。同庁は防災を、医療や教育などと並ぶ、準公共分野の一つとして位置付けている。国は内閣府、デジタル庁それぞれのシステムを連接させ、「防災デジタルプラットフォーム」として統合的に整備・運用していく方針である。

民間も呼応した。2022年12月に官民共創で同プラットフォームの実現と効果的な活用を目指す「防災DX官民共創協議会」が発足※1。官民データ連携基盤のアーキテクチャ、連携させるべきデータ項目、マイナンバー活用方策などを検討する。

複合的価値を生み出す「防災DX」

前述のとおり防災DXはデジタル化の先にある。より高度なデジタル化対応が急がれる。例えば防災デジタルプラットフォームを活用した官民デジタルデータや防災アプリの流通。これと並行し、デジタル化に沿って自治体など関係機関の災害対応業務のBPR※2や標準化を進める。災害対応がより迅速かつ的確に推進され公助力が向上する。

災害が差し迫った時や発生した直後に、個々の住民や被災者の状況や特性に応じたきめ細かいパーソナル防災情報を提供することで、自助力・共助力が向上する。さらに、例えばマイナンバーと健康・医療情報の連携により、避難所でのアレルギー対応食品の配付や医薬品の提供を迅速化・円滑化できる。こうしたデータ連携により、避難所生活から生活再建に至る過程で煩雑に感じることが多い行政手続きをワンスオンリー化※3する。

今後、住民基本情報、医療・介護、教育、モビリティなど普段からニーズの高い分野のデータと防災データを組み合わせれば、防災対策を内包する複合的価値をもつ住民サービスともなる。日常生活に必要不可欠となれば、もはやコストと見なされないだろう。

これが目指すべき防災DXの姿だ。官民共創の機運が盛り上がっている今こそ、時機を逸することなく、防災デジタル化と防災DX実現に向けた取り組みを一気呵成(かせい)に進めていきたい。

※1:202の民間事業者と71の自治体が参画(2023年1月19日時点)。当社は事務局を担当している。

※2:Business Process Reengineering:業務の流れ・構造などの見直し・再設計。

※3:「一度提出した情報は、二度提出することを不要とする」というワンスオンリーの原則がデジタル手続法に定められている。