マンスリーレビュー

2017年2月号

MRIマンスリーレビュー2017年2月号

巻頭言|イノベーションの波に乗る

常務研究理事 森 義博
アップルがiPhoneを発表したのが2007年1月9日。今年はiPhone10周年にあたる。今やスマートフォンは世界中で年間14億台(2015年)が出荷され、先進国のみならず途上国まで普及。スマートフォン上のいろいろなアプリケーションが新しい文化を生み出し続けている。これは、イノベーションの一つであるといっても異論はないだろう。

2007年当時、携帯電話の世界シェアトップ3はノキア、モトローラ、サムスンだったが、2015年ではサムスン、アップル、ファーウェイと変わっている。トップ3を維持しているのはサムスンのみで、ノキア、モトローラともに携帯電話部門はすでに売却されてしまっている。この差はどこで出たか。iPhone発表当時、サムスンを除くメーカー各社は冷ややかな反応だった。サムスンのみがiPhoneにイノベーションの芽を察知し、対抗機種の検討を開始した。その後、iPhoneが順調に販売台数を伸ばしていったのに対して、追従できた大手メーカーはサムスンのみであり、この結果として1社生き残ったのである。

グーグルもいち早く反応し、2007年11月に携帯電話用OSのAndroidをベースに規格団体「Open Handset Alliance」を設立した。ここで、Androidを無償提供するとともに、チップメーカーやサムスンに加えて新興の端末メーカーなどを結集してiPhoneに対抗した。現在、スマートフォン市場で大きなシェアを占めるアップル以外の会社は、ほとんど早期にこのアライアンスに参加した企業である。

「強い者、頭の良い者が生き残るのではない。変化に対応できるものが生き残るのだ」とダーウィンは言ったとされている。その真偽は別にして、ビジネスの世界では正しい意見だと思う。イノベーションを生み出すことは誰でもできることではないが、イノベーションの波に乗ることは誰にでもできる。世界で起こっている事象を注意深く観察し、イノベーションの兆候をつかんだときに素早く行動できるかが鍵になる。
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