マンスリーレビュー

2018年2月号

MRIマンスリーレビュー2018年2月号

巻頭言|イノベーションにより年齢の壁を破る

常務研究理事 森 義博
2017年9月の総務省資料によると、日本の人口における65歳以上の割合は27.7%と4分の1を超えている。少子高齢化の流れは現在も進行しており、2020年代半ばには高齢者の比率は3分の1に達すると想定されている。この状況が解消される見込みはなく、現在65歳となっている年金受給開始年齢の引き上げなどが具体的に議論されるようになるだろう。

今まではシニアになって働くとしても、身体能力の衰えを加味して補助的な作業が求められることが多かった。しかし、加齢による知的レベルの衰えがないことはすでに証明されており、AIやロボティクスなどによるイノベーションの進展で身体能力の衰えを補うことができれば、より主体的な仕事に就くことが可能になる。当然、長年の経験に裏打ちされたノウハウをもっているので、若者に伍して働くこともできるかもしれないが、このパワーを自分たちのために使ってはどうだろうか。

昨年、最高齢のプログラマーとして若宮正子さんが話題になったが、80歳を過ぎてプログラミングを始めるようになった動機は、「シニアが使えるアプリが世の中にはほとんどないため、自分で作ってみようと思った」ということらしい。この例からも分かるように、シニアのことが分かるのはシニアなのである。こうしたアプリによって、今まで若者に頼っていた介護などの作業をシニア自らができるようになれば、介護者はより相手に寄り添うことができるのではないだろうか。

プログラミングなどの知的作業もAIは支援してくれるようになるだろうし、AIによる運転支援システムは反射神経の衰えをカバーして、事故の心配なく、要介護者の送迎や見守り訪問を実現できるだろう。ロボットスーツは筋力の衰えをカバーしてくれるため、介護施設内の肉体的実務で活躍することができる。このように、イノベーションにより年齢の壁を破ることでシニアがシニアを支えるようになれば、若者はよりクリエイティブな仕事に就けるはずだ。
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