マンスリーレビュー

2018年2月号トピックス4テクノロジー

日本企業が参入すべき「宇宙資源ビジネス」

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2018.2.1

科学・安全事業本部内田 敦

テクノロジー

POINT

  • 近年注目される宇宙資源ビジネスで最も期待できるのは月の水資源。
  • 日本企業は関連技術を多く保有しており、ポテンシャルが高い。
  • 市場形成が途上にある今こそ、参入して先行者利益の確保を。
今、宇宙ビジネスが熱い。中でも、欧米で急速に注目を集めているのが月、火星、小惑星などにある資源を活用する「宇宙資源ビジネス」である。アメリカおよびルクセンブルクでは民間企業が獲得した宇宙資源の利用を認める法律がすでに制定されており、2030~35年頃には宇宙資源ビジネスが開始される見込みとなっている。

最も有力視されているのは、月面における「水資源」である※1。月の重力が地球の6分の1であることを活かし、火星やさらに遠くの天体へ向けたロケットを発射する拠点を月面に設置する構想がある。水は水素と酸素に分解することでロケットの燃料にできるため※2、この構想を実現する資源として注目を集めている。

もちろん、月での水資源ビジネスの実現は容易ではない。地中の水を探索するローバ(専用車両)、掘削用の重機、燃料を生成・貯蔵するプラント、作業管理用の通信インフラ、滞在型の宿泊施設、そして電力確保用の太陽光発電所などが必要であり(図)、多様な分野の企業の協力が不可欠である。欧米企業は取り組みを始めているが、特定の事業領域に注力しており、全体として圧倒的な優位に立つほどの企業は出現していない。

日本には、宇宙ステーションや環境の厳しい地域でのプラントの建設など、この分野に関連した技術を保有する企業が多くあり、技術的なポテンシャルは高い。市場が形成途上である今こそ、関連技術を有する企業が協力・連合して、日本発の宇宙資源ビジネス創出を目指した活動を開始するのが得策ではないだろうか。

日本政府も月着陸実証ミッションや月の極域探査計画などの活動を行っている。しかし、欧米企業のスピードを考えると、国際的な市場において先行者利益や権利を確保可能なポジションに立つには、政府の動きを待っていては間に合わない。産業界の主導で大企業とスタートアップが連携するなど、月での水の探査や掘削ミッションを早期に開始することを期待したい※3。宇宙資源ビジネスは多様な企業に参画が求められる分、新産業の創生にもつながる公算が大きいのだ。

※1:白金などのレアメタルを宇宙で採掘し、地球に持ち帰って販売する構想を有する企業も多いが、輸送コストなどからして現状では採算が合わないとされている。

※2:例えば、日本のH-llAロケットは燃料に液体水素、酸化剤として液体酸素を使っている。

※3:日本でも2017年12月に株式会社ispaceが、スタートアップを対象とする投資の「シリーズA」としては国内過去最高額となる101.5億円の資金を調達した。

[図]2030年頃の月面開発のイメージ