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2018年2月号トピックス2デジタル・イノベーション地域創生

安全管理から始める日本型食品プラットフォームの構築

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2018.2.1

地域創生事業本部氷川 珠恵

デジタル・イノベーション

POINT

  • 海外ではブロックチェーン技術が企業間の協働を促し、各種効率化に成功。
  • 日本は食品プラットフォーム構築に出遅れ、国際競争力低下の要因に。
  • 差し迫っている安全管理の分野から日本の食品産業も協働を始めるべき。
2017年6月に開催された食品関連企業が集まる国際会議でウォルマートは、マンゴーの流通トレーサビリティ(食品の追跡)を例に取り、「どの農場で梱包(こんぽう)されたのか特定するのに従来のシステムでは6日と18時間かかっていたが、新たなシステムでは2.2秒で完了した」と発表した。この驚異的な性能はIBMのブロックチェーン技術※1の導入によって実現されたものである。

実は、高速化はブロックチェーン技術の導入効果の一つにすぎない。ブロックチェーン技術が複数の事業者で構成される一つのプラットフォーム(電子上の取引の場)の構築を促し、自動的かつ瞬時に必要な情報を共有可能とする。まさに、決済の簡素化や配送の効率化、在庫最適化など多くの効果を生むイノベーションである。

ウォルマートによれば、ブロックチェーン導入に伴うコスト削減効果も大きい。2017年8月には同社やIBMの呼びかけに応じ、ドール、ネスレ、ユニリーバなど食品各社がプラットフォームへの参加を表明している※2。自社のノウハウや情報を取引先や競合各社に知られかねないリスクもあるが、それ以上にコスト削減や情報精度の向上など、参画に伴うメリットの方が大きいということだろう。

欧米では同様に、複数企業が協働で新技術を活用し、コスト削減メリットを見いだすためのプラットフォーム構築が活発化している。翻って日本企業をみると、個社が独自に新技術導入の検討を開始したばかりで、企業間の協働は進んでいない。各社の情報を一つのプラットフォームで共有することなど想定すらできないのが実情だ。このままでは欧米と比較して日本企業は高コストのサプライチェーンとなってしまう。では、どこから始めるか。

安全管理の分野から協働を始めるべきだろう。食品安全管理の手法「HACCP※3」の義務化など、国を挙げて安全管理の取り組みが強化されている今、企業間の協働を促す絶好の機会だ。安全管理コストを最適化する日本型食品プラットフォームの構築は、安全かつリーズナブルな日本食ブランドの訴求に貢献する。

※1:仮想通貨「ビットコイン」で用いる分散台帳システムの要素技術として知られているが、食品トレーサビリティや各種サプライチェーンなど流通・物流用途での活用事例が急増している。

※2:日本IBM発表資料。
http://www-03.ibm.com/press/jp/ja/pressrelease/53028.wss

※3:Hazard Analysis and Critical Control Point の略。「危害要因分析重要管理点」と訳される、国際標準となっている食品安全管理の手法。原材料の入荷から出荷までの全工程において、健康被害を引き起こす可能性のある危害要因を科学的根拠に基づき管理する。

[図]食品安全管理に関する協働のイメージ

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