マンスリーレビュー

2019年2月号

MRIマンスリーレビュー2019年2月号

2019年2月号 巻頭言「スマートフォンの次に来るもの」

常務研究理事 森 義博
スマートフォンは、インターネットを手軽に利用するためのデバイスとして認知され、コスト削減も進んだことから開発途上国を含め世界中に広まっている。ディスプレーとマルチタッチセンサーによるオールインワンデバイスとしては完成の域に達したと言えよう。

移動体通信の歴史を見ると、1970年代後半に自動車電話が登場し、80年代後半には人が持ち運べるようになった。90年代後半の携帯電話普及で移動に制約がなくなり、2000年代後半のスマートフォンでインターネットとの融合が加速した。歴史的にはおよそ10年周期で技術革新が行われており、2010年代後半となった現在、次のイノベーションが現れても良いタイミングである。

スマートフォンの次に来るものは何か。おそらく人とインターネットが融合する、Internet of Humanを実現するものになるだろう。人がデバイスを操作してインターネットとつながるのではなく、人の動きや考え方に基づき必要かつ正しい情報が自動的に集まる社会が到来するのである。その時のデバイスの形はオールインワンである必要はなく、存在を意識しないですむウエアラブルデバイスやセンサーの集合体になるかもしれない。単独でインターネットに接続できるスマートウオッチやスマートグラスのような技術は実用化され、体内に埋め込んだマイクロチップによるサービスも始まっている。あとはこれらの技術を統合するユーザーインターフェースを整備するだけのはずである。

こうしたシステムが実用化されれば便利になるのは間違いない。ただし、個人のデータが国や特定の事業者に独占され管理される社会は誰も望まない。このため、プライバシーに関するデータは個人に帰結させ、匿名化された行動情報だけを流通させるような情報の階層化が必要だ。これらの課題をクリアした上で人とインターネットの融合が可能になれば、さらに新しいイノベーションも起こるだろう。スマートフォンの次にかかる期待は大きい。
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