マンスリーレビュー

2019年2月号トピックス5スマートシティ・モビリティ

構想から実装へ動き出した逆参勤交代

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2019.2.1

プラチナ社会センター松田 智生

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 逆参勤交代は大都市圏の会社員による地方での期間限定型リモートワーク。
  • 国内三カ所でトライアル、働き方改革と地方創生に有効と判明。
  • 制度設計や経営層参画による「続ける」「深める」「広める」が実装に重要。  
逆参勤交代とは、大都市圏の会社員による地方での期間限定型リモートワークである。働き方改革と地方創生の同時実現を目指す構想として、当社が2017年に提唱した※1

実装に向けた知見や課題を得るためのスモールスタートとして2018年夏、当社の主催にて国内三カ所で3泊4日の「トライアル逆参勤交代」を行った。岩手県八幡平市(高原リゾート型)、茨城県笠間市(東京から電車で約1時間の近郊型)、熊本県南阿蘇村(被災地復興型)で実施し、20~60代男女の会社員が約10名ずつ参加した。

参加者は、通勤ラッシュにもまれることも無く、自然も豊かな環境でのリモートワークを体験するとともに、地域の魅力や課題を調査して地元の自治体、観光協会、中高生、移住者らと意見を交わした。最終日には、首長や住民向けに地域活性化のプランを発表した。

トライアルへの評価として、「高原でのリモートワークが快適」「異業種交流が新鮮」「地域と深く関わるきっかけとなった」「セカンドキャリアの参考になった」との声が寄せられた。参加者の約8割が「地域課題解決の取り組みを継続したい」と回答した。今後の課題としては、「リモートワークでの情報セキュリティ」「人事制度の整備」が示された。

さらに逆参勤交代を体験してほしい役職や部署として、「役員」と「人事部」が挙げられた。逆参勤交代が従業員の健康づくりや働き方改革だけでなく、地方創生と本業とのシナジーにもつながるとトライアル参加者が確信していることがうかがえる。企業単位での実現に向けて、決定権をもつ経営層や人事部門に、より関心を持って欲しいという期待感の表れでもある。

好発進したトライアル逆参勤交代は、2019年度も全国各地で実施予定である。本格的に普及・実装するためには、3つの点が重要になるだろう。すなわち、一過性のイベントにとどめず「続ける」こと、さらに制度設計や課題解決を官民で進めるとともに経営層や人事部門も巻き込んで「深める」こと、そして、シンポジウムの開催を通じて具体的な効用を説くなどして、日本全国に「広める」ことである。
[図]逆参勤交代の1日