マンスリーレビュー

2019年2月号トピックス2MaaSスマートシティ・モビリティ

日本版MaaSが実サービス化の段階へ

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2019.2.1

次世代インフラ事業本部佐藤 賢

MaaS

POINT

  • 「MaaS」がサービス提供を見据えた実装フェーズへと移行。
  • 地域で持続可能なサービスには、受容性の検証や官民連携が重要。
  • 実証実験の成果が他地域に波及して日本版MaaSが定着するよう期待。  
MaaS(Mobility as a Service)とは、移動手段をサービスそのものとして提供するという概念である。具体的には、目的地までの移動について、マイカーだけに頼るのではなく、複数の交通機関から各個人に最適な経路や手段を組み合わせて提供するようなサービスを指す。取り組みは欧州をはじめとする海外で先行しており、日本では現時点で、実証実験などを通じた、個別の技術や機能の検証による課題出しにとどまっている。

都市郊外におけるラストワンマイルの交通手段確保や地方での交通弱者支援に、MaaSは有効だとされる。しかし、多様な地域固有のニーズへの適切な対応のあり方、あるいはサービスに対する需要が不明なままでは、民間による事業参入は難しい。地域の交通基盤を維持する目的で行政が手掛けるにしても、財政的な余裕は乏しい。これらの壁をクリアするには、民間が自社サービスを地域の実情にフィットさせることに加えて、行政も官民連携を通じた新たな交通サービスの開発を促進する必要があるだろう。

2019年には国内でも、実サービス化を見据えた試みが本格化する(表)。東急電鉄が中心となって「日本初の郊外型MaaS」と銘打ち、たまプラーザ駅(横浜市)付近の住宅地で1月下旬から約2カ月の実証実験を展開。スマホからの事前予約状況に応じて運行ルートを柔軟に変更するため利用者が希望の場所で乗車できる「オンデマンドバス」や、同じマンションの居住者同士を対象とするカーシェアなど4種類の交通手段を提供する。

今年春にはJR東日本、東急電鉄、楽天が、駅や空港から観光地までのタクシーやカーシェアといった二次交通機関をスマホで一括手配して決済できる「観光型MaaS」の実験を伊豆エリアで行う。自治体や宿泊施設、観光拠点と連携することで、伊豆に点在する名所を観光客がシームレスに周遊できるようにするとともに、利用者側の詳細なニーズも把握して、新たな交通手段の開発につなげる。

発着時刻が正確な鉄道や運行管理の行き届いたバスやタクシーなど、日本の交通機関の持ち味である高いサービスレベルを活かせれば、MaaSが普及する公算は大きいはずだ。実証実験の成果が他の地域に波及して、日本版MaaSが定着するよう期待したい。
[表]サービス化に向けたMaaSの実証実験