マンスリーレビュー

2017年11月号

MRIマンスリーレビュー2017年11月号

巻頭言|多様な社会課題の一体的解決

副理事長 本多 均
少子高齢化、地球環境問題、財政難などわが国が直面する社会課題、2015年に国連が掲げた17項目に及ぶSDGs(持続可能な開発目標)など、われわれが取り組むべき課題は明確だ。そしてこれらの社会課題をビッグデータ、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、ロボットに代表される技術革新で解決するという動きも、すでに官民で活発化している。

それでいて将来への安心感は一向に高まらない。医療技術の進化や社会保障の充実で、寿命が延びながら社会保障費が増大し財政も悪化、ネット通販で利便性が向上するも物流問題が拡大している。課題が一つ改善される一方でほかの課題が浮上するといった、もぐらたたきのような状況が続いている。過去にも似た例はあった。モータリゼーションによる移動の高速化や利便性の向上が交通事故や渋滞、排気ガスなどの公害、市街地のスプロール化(無秩序な拡大)などを引き起こした。同じことの繰り返しを避けるためには発想を変える必要がある。

課題と解決策を一対一で結び付けるのではなく、多くの課題を一つの方策で解決することを考えてみよう。例えば、働き方改革の中で注目されるテレワークは、時間的なワークライフバランスの改善にとどまらず、快適な住まい方も実現する。大都市圏の企業に就職しながら、自然豊かな地域に住み、自宅や最寄駅前のシェアオフィスで働くことが可能となり、駅を中心としたコンパクトな市街地に再生するという効果まで期待したくなる。

多くの社会課題が複雑に絡み合う現代だからこそ、またAIをはじめとした技術革新が進んでいる今だからこそ、同時あるいは一体的な解決の可能性はさらに高まる。まずは、目の前の一つの課題にとどまらず、波及する多くの課題を見つけることが重要だ。遅々として進まない防災や地方創生などを含めて、すべての課題が並行して改善されていくことを追求したい。
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