マンスリーレビュー

2017年11月号トピックス2デジタル・イノベーション経営コンサルティング

「匿名化された個人情報」の商業利用を進めるには

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2017.11.1

コンサルティング部門 社会ICTイノベーション本部伊藤 陽介

デジタル・イノベーション

POINT

  • 適切に匿名化された個人情報の商業利用が可能に。
  • 情報漏洩などに対する消費者不安の解消が鍵。
  • 企業は発想を転換してデータ共有や連携強化を。
企業による個人情報の商業利用は、これまで厳しく制限されてきた。プライバシー侵害につながる危険性が大きかったからだ。一方、膨大なデータを収集、加工、分析する技術が進んできた中、個人に関する情報の総称である「パーソナルデータ」を企業が上手に活用することで、経済を活性化できるとの期待が強まってきた。

大きな節目は、2017年5月の改正個人情報保護法の施行である。改正により、特定の個人を識別不能にしたパーソナルデータである「匿名加工情報」であれば原則、本人の同意を得なくても第三者へ提供可能になった。同時に、個人情報の定義を明確にした上で流出や不正使用への対策を徹底させ、プライバシー保護措置を強化した。

パーソナルデータの活用例を挙げてみる。コンビニエンスストアで買い物をした際、会計時に会員証提示を求められた人は多いだろう。どのような人がいつ、何を買ったかというデータを、大量に集めて食品会社や流通業者に提供すれば、商品開発やマーケティングに活用できる。また、医療機関が有する膨大な患者の診療記録は、製薬会社や保険会社にとって、新たな医薬品や契約プランを世に出す上で、大いに助けとなる。無論、こうした消費履歴や医療情報などのデータは、改正個人情報保護法に基づき、特定の個人とは無関係な存在として扱われる。

だが、法制度が整ったにもかかわらず、日本での利活用機運は依然乏しい。背景には、情報漏洩への不安感から、パーソナルデータの商業利用に対する消費者の許容度が諸外国と比べて低い点がある(図)。顧客から嫌悪感を抱かれてイメージが傷つくのを恐れて、企業側も自社でデータを囲い込む傾向が引き続き強いようだ。

データは21世紀の経済や経営の「血液」となり得る。つまり、お金と同様、流通しなければ、新たな価値を生み出してはくれない。企業はこの点を踏まえ発想を転換すべきではないか。消費者への情報開示を通じて不安解消を徹底的に図るとともに、改正個人情報保護法の枠組みを積極的に活用して企業間のデータ共有や連携を図る、オープンイノベーション型の取り組みに期待したい。

[図]パーソナルデータの商業利用に関する消費者意識の国別比較

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