ここ数年さまざまな業界でDXが推し進められているが、マーケティング分野は早い時期からデジタル化が進んだ分野の1つである。マーケティングは昔から4Pと呼ばれるPromotion(広告宣伝、販売促進)、Place(販売場所や流通チャネル)、Product(商品やサービスの研究開発)、Price(商品やサービスの価格)という観点で分析が行われてきた。これら4Pのうち、PromotionとPlaceの2つについてはデータ活用の研究・導入が先行的に進んでいる。Promotionでは広告宣伝や販売促進といった施策のコストパフォーマンス向上、Placeでは受発注や請求の効率化・コスト削減、といった明確な目的に向かって従前から一定のデータが蓄積、活用されてきたためだ。「デジタルマーケティング」の文脈で語られる分析テーマの多くは、このPromotionとPlaceに関連する課題である。
一方で、Product、Priceの領域においてはこれまでデータ活用が思うように進んでこなかった。その要因は先ほどのPromotionやPlaceとは異なり、積極的なデータ化がなされてこなかったことにある。Productの例を挙げると、試作段階において研究者のノートに情報が記載されるにとどまり、ついには日の目をみなかった製品の情報が存在したりするかもしれない。当社の業務経験から、AI導入を検討するメーカーの中には、試作のデータをデジタルデータ化していない企業が少なくないことに驚かされる。また、Priceでは最終小売価格が小売事業者の一時的な裁量で設定されてしまい、メーカーでは最終的に消費者の購入価格を把握できないといったケースもある。
しかしながら、昨今の技術進歩によってデータ収集・蓄積が容易になり、必要なデータがたまり始めた。それにより、この2つのP(Product、Price)でもデータ駆動型への転換が可能になりつつある。以降ではそれぞれについて詳しくみていく。