「データ駆動型事業運営」シリーズ 第2回:どこから始める「データ駆動型事業運営」

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2021.4.27

DX技術本部小野寺光己

社会・経営課題×DX
「データ駆動型事業運営」シリーズの第1回では、『データ駆動型経営』の中でも、より現場に近いメソッドとして、ビッグデータを直接的に業務につなげて活用する「データ駆動型事業運営」を紹介した。耳慣れない言葉のため、3つの特徴を振り返っておこう。

①業務運用における大小さまざまな意思決定が原則自動で行われる
②多様なビッグデータを直接的に事業運営に活用する
③個別業務・タスクに対する課題解決のみならず、事業全体の運営改善・改革につながる

既存の事業会社において、データ駆動型事業運営への転換を図るべき事業・業務はないだろうか。第2回では、どのような事業・業務がデータ駆動型事業運営に適しているのか考えてみたい。

「データ駆動型事業運営」と相性のよい事業・業務の要件は

「データ駆動型事業運営」と相性のよい業務は、データ活用によって意思決定がより精度よく、スピーディーに行うことができるような業務だろう。要件を分解すると以下の3つになる。現状の業務・事業運営を基準として適合性を見るのではなく、「今はリソース上の制約などがありできていないが、理想の業務を考え直すと適合しないか」——と思考を巡らせていただけると幸いだ。

「データ駆動型事業運営」に適した業務の要件

①さまざまな情報に基づいて、意思決定を行う業務

例えば、関連する顧客や環境の情報を集め、過去の事例と照らし合わせて、“〇”か“×”か決定するような業務だ。オフィスワークのほとんどが該当するように感じられるかもしれないが、製造ラインや事務処理など意思決定を伴わない業務は検討対象外※1になる。このような業務の実態は、ベテランの経験・知見に頼ったり、担当者のその場の勘に任せたりしているケースも多く存在する。このため、意思決定ロジックが暗黙知化していることや、担当者によって意思決定の結果がばらつくことを問題視する企業も多い。
 

②意思決定の件数・回数が多い業務

1日で数千、数万といった単位で処理する、また、毎日同様の意思決定をするような業務が代表的である。現在はリソースの制約によって、年単位・四半期単位で意思決定を行っているが、理想としては日単位、あるいはリアルタイムで意思決定することが望ましいものも含まれる。その他、現在は試算・シミュレーションを数パターンしか行っていないが、本来は大量のパターンで実施して意思決定したいような業務もあるだろう。
 

③環境の変化に応じて、意思決定の基準やロジックの改善が必要な業務

コロナ禍前後で意思決定の基準が変わってしまった業務はないだろうか。例えば、小売店が新規出店の意思決定をする基準はコロナ前後で変わっていないだろうか。この例は極端なケースだが、顧客の嗜好や事情は日々変化しうる。特にVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)時代とも呼ばれる昨今、環境変化に対応して意思決定の基準やロジックを変化させるべき業務が増えていくだろう。

まだ少し抽象的なため、マーケティングオートメーション※2の活用が進んでいるデジタルマーケティングの領域を例として、①~③の要件に合致しているのか考えてみる(図1)。
図 1 デジタルマーケティング業務の適合性
図 1 デジタルマーケティング業務の適合性
出所:三菱総合研究所
このようにデジタルマーケティング業務は、データ駆動型事業運営の業務要件の多くを満たしている。マーケティングオートメーションが進んでいる背景には、こういった「データ駆動型事業運営」への適合性の高さもあるのだろう。

「データ駆動型事業運営」への転換を図るべき事業・業務は

それでは、「データ駆動型事業運営」に適した業務の要件がわかったところで、その要件を満たし、効果も期待できる代表的な業務領域を考えてみよう。これまで、データ活用に関して多くの企業と議論してきたが、各社が「有望」と口を揃える領域は以下の3領域のように思われる。図には各領域に属する取り組みの例も示した(図2)。
 

1.マーケティング

マーケティングの4Pのうち、Promotion(広告宣伝、販売促進)、Place(販売場所や流通チャネル)は売り上げに直結するため古くからデータ活用が検討されているが、昨今の技術進歩により、Price(商品やサービスの価格)やProduct(商品やサービスの研究開発)の領域まで拡張が可能となった。
 

2.リスク管理

信用リスクやオペレーショナルリスクなど、将来起こり得るリスクを想定し、その影響を最小限に抑えることを目指す。発生確率の予測やリスクが顕在化した場合の影響把握のため、従前からデータ活用が他分野に比べて進んでいる。国内では、2000年頃から信用リスクの領域でモデル導入が拡大。今後はAIなどの最先端技術の導入による高度化フェーズに入る。
 

3.ビジネスリソース最適化

ヒト・モノ・カネといったビジネスリソースを配分・管理するような業務。IoTなどによるデータ取得が進みつつあり、今後、活用拡大が見込まれる分野。業務全体に対する最適化なので期待効果が大きいことに加え、従来データ化できていなかった領域も多いため、事業に対する潜在的インパクトは大きい。
図 2 「データ駆動型事業運営」へ転換を図るべき業務領域と取り組み例
図 2 「データ駆動型事業運営」へ転換を図るべき業務領域と取り組み例
出所:三菱総合研究所
もちろん、上記3領域以外でも、データ駆動型事業運営に変革する価値のある事業・業務はあるだろう。本コラムの第3回以降では、これらの領域から具体的な取り組みを取り上げ、「データ駆動型事業運営」への転換の可能性を示していきたい。

「データ駆動型事業運営」と相性のよい業務を見つけたら

「データ駆動型事業運営」に適した領域を見つけたら、次はどうすれば実現できるか、という問題になってくる。大きく分けると実現する手段として、①内製化、②外部を活用する方法——の2つが考えられる。ビッグデータを直接的に業務とつなげて大小さまざまな意思決定を自動的に行うことを前提とすると、「データ駆動型事業運営」の構築・運用には、機械学習やインフラといったさまざまな知見が必要になってくる。本連載の後半では、実現方法に関する紹介を予定している。それらも参考に、自社にとって最適な実現手段を選んでいただけると良いだろう。最後はデータ駆動型事業運営からDXに立ち戻って、全社的な目線でデータ駆動型事業運営を考察する予定である。

※1:厳密には、製造ラインや事務処理が完全に対象外となる訳ではない。製造ラインでは不良品があった場合、事務処理では記入ミスや不備があった場合など、意思決定を求められる場合もある。

※2:見込み顧客へのメール送付、キャンペーンの効果測定といった、企業のマーケティング活動を自動化・効率化する仕組み、ツール。

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