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2017年11月号トピックス6経済・社会・技術

ワーキングマザーの「買い物不便」を解消

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2017.11.1

プラチナ社会センター佐野 紳也

経済・社会・技術

POINT

  • 30代女性は「普段の買い物で不便を感じる割合」が高く、しかも増加傾向。
  • 乳幼児がいるワーキングマザー(正規雇用)の「不便さ」が顕著。
  • ワーキングマザーの不便解消サービスにビジネスチャンス。
普段の買い物で感じている、ちょっとした不便さを解消することが、女性の買い物需要を底上げする可能性を秘めている。当社調査※1によると、「普段の食品や日用品の買い物で不便を感じる割合(以下、「買い物不便」割合)」は年々増えており、特に30代女性で、その傾向が強い。2017年における「買い物不便」割合を性・年代別に見ると、30代女性が最も高く、29%である。しかもその割合は、2011年に比べ、4ポイントも上昇している。

30代女性の「買い物不便」の割合は、子供のいない場合は27%だが、子供のいる場合31%である。さらに、子供の有無とライフコース(働き方)別に分析すると、0~3歳の末子がいると不便さを感じる比率が総じて高まる。中でも正規雇用されている「ワーキングマザー※2」は42%と突出している(図)。ワーキングマザーでも非正規雇用の場合は34%、専業主婦は33%にとどまる。

乳幼児のいるワーキングマザー(正規雇用)には、2種類の買い物不便が生じていることもわかった。第一は、託児所から引き取った子供が一緒だと落ち着いて買い物ができない点にある。こうした問題を解消するには、スーパー内に託児所を設置するのが有効だろう。米国の高級スーパー・モーリーストーンには「モーリーランド」という無料の託児所がある。この託児所には監視カメラが設置され、店内の至るところにあるテレビモニターでいつでも様子を見ることができ好評だ。

第二は、購入した商品が重い場合に持ち帰りが難しい点。スーパーによっては近隣住民を対象とした宅配サービスもあるが、最終締め切りの時間が早すぎるため、ワーキングマザーが利用できないことが多い。こうした場合は、宅配サービスの締切時間を延長、あるいは深夜・早朝配達サービスを実施したり、自宅に宅配ボックスを設置したりする策が考えられる。夫の協力を促す方法もある。例えば、妻が買った物を冷蔵ロッカーなどにいったん預かるサービスがあれば、遅れて帰宅する夫が専用の解錠キーでロッカーから荷物を持ち帰ることも可能だ。この方式であれば、実現は難しくないだろう。

※1:三菱総合研究所「生活者市場予測システム(mif)」による調査。
対象:日本全国の20~69歳の男女
サンプル数:3万人
調査時期:2011年から毎年6月に調査。最新は2017年6月
調査方法:ウェブインターネット調査

※2:仕事と家事・子育てを両立させている母親。

[図]30代女性の「買い物不便」割合