マンスリーレビュー

2022年5月号

MRIマンスリーレビュー2022年5月号

「DX」リスタート 日本再生のトリガー

研究理事 比屋根 一雄
2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大とともにDXという言葉が世の中に広がったことから、DX元年と言われた。実際には2019年ごろに多くの企業がDX戦略を打ち出していた。それから3年が過ぎて取り組みが一巡し、課題も見えてきた。

当社のアンケート調査によると、82%の企業がDXを活用した業務効率化に取り組んでいる。このうち、想定どおりの成果が出ているのは平均15%にすぎない。DXの進展度が高くビジネス変革にまで取り組む企業群でも23%にとどまっている。

つまり、DXの成果は多くの企業でいまだ限定的である。ただ、デジタル新事業の創出とともに既存事業の業務を効率化させる「両利き経営」に成功し始めている企業もある。

当社のDX支援実績からすると、企業によってこうした差が生まれる主因は、デジタル戦略、デジタル人材、データの利活用の3点にある。本号の特集では、天地人の観点からDXを見直し、成功につながる戦略の描き方や、競争力強化の鍵となる社内外データの活用法を紹介する。

デジタル新事業を立ち上げることが、翻って全社のデジタル変革を進め、既存の基盤事業を強化することにもつながる。ひいては生産性が低く、成長力に乏しい日本経済を再生させるトリガーにもなるだろう。各企業には、足元の業務効率化ばかりに目を奪われることなく両利き経営を自分事としてDX戦略を描きなおし、リスタートするよう提案したい。
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