マンスリーレビュー

2017年8月号

MRIマンスリーレビュー2017年8月号

巻頭言|日本の高齢社会の向かう先

常務執行役員 政策・公共部門長 長澤 光太郎
近年、高齢者に関連する多くの調査結果が蓄積され、さまざまな変化が見えるようになってきた。中でも基本的と思われるいくつかを見てみたい。

高齢者の体力は著しく増進している。65~79歳の体力テスト合計点は1998年度の調査開始時に比べて男女とも着実に上昇している。その背景の一つに継続的な運動習慣がある。週1回以上の運動習慣をもつ人は30~60歳の男性では半数以下だが75~79歳では8割弱に達し、しかも増加傾向にある。なお日本の高齢者運動能力はトップレベル層も高く、例えば高齢者の五輪ともいえるマスターズ陸上の昨年大会では国別メダル獲得数は7位で、中には85歳以上の100m走を15秒台で走り優勝した男性もいる。

働き続ける高齢者が増えている。もともと日本人は65歳までに退職したい人が3割に満たず、残り7割は「70歳以降まで」または「働けるうちはいつまでも」働きたいと考えており、主要国の中では独特の価値観だといわれる。働く高齢者の数は730万人で、比較可能な統計のある1968年以降では最多である。高齢者の就業率は主要国で最も高い。非正規やパート・アルバイトが多くを占めるが、その理由は「自身の都合の良い時間帯に働きたいため」が3割で最も多い。

QOLの観点でも変化が起きている。がん治療の緩和ケア病床数は1990年の117床から2016年の7,695床へと26年間で66倍に増えた。「生きがいを感じる」という80歳以上の人は過去20年で72%から77%に増えた。65歳以上の人で、延命のみを目的とした医療を望まず自然に任せてほしいと回答する割合は年々高まり、2012年度には9割を超えた。

私たちの多くは高齢でも健康を保ち、機会があれば長く働き、生活の質を維持し、いざという時が来たら無理せず自然に逝きたいと考える。蓄積された各種調査結果は、現実がその方向に向かっていることを示唆している。
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