マンスリーレビュー

2017年8月号トピックス4ヘルスケア・ウェルネス経済・社会・研究開発

「健康長寿」は新たな生きがいを作り出す

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2017.8.1

経営コンサルティング事業本部松田 信之

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 技術の進化により、人間の身体能力や知的能力が強化される。
  • 老化や障害によるハンディキャップは解消または大幅に縮小される。
  • すべての個人が潜在力をフル活用できる生きがいのある超長寿社会に。
100歳以上の日本人は1963年に153人だったが、2016年には6万5,000人を超えた。国立社会保障・人口問題研究所が人口動態から推計した結果では、2050年には53万人に達する(図)。200人に1人が100歳以上になる計算だ。

並行して心身の老化防止が進む。脳神経科学、遺伝子工学、ナノテクノロジー、ロボット工学などさまざまな科学的成果が融合し、それを利用して人間の身体能力や知的能力を強化し、限界を超越させようとする取り組みが加速している。2030年に向けて、人工知能技術をはじめ、臓器や部位の再生医療、加齢を制御する薬剤や医療技術、血管内ロボットによるホルモン供給を通じた免疫力強化といった先端技術が次々と開発され、普及していくと予想される。人工筋肉、義手・義足、パワードスーツなどによって、肉体的な強化も実現するようだ。こうした技術の数々が、人間を異次元の存在へと変えていく。

技術革新によって実現する健康長寿社会は、高齢者に限らず障がい者など、さまざまな個人のハンディキャップを解消ないしは大幅に縮小する。彼らの能力は健常者を超えられるかもしれない。これにより、従来の社会が前提としてきた年齢や能力に応じた適材適所のような考え方は変わり、社会の多くのシステムに変革が必要になる。

こうした変革は、実現するとしても数十年後だ。しかし、その過渡期において、働いて金銭所得を得ることが社会生活で最も重要な活動であるという「労働中心主義」は払拭されるだろう。段階的ではあるが、年齢や能力に関係なく、あらゆる個人が社会へ参加する最大の目的は、所得を得ることから、自尊や自己実現、社会や誰かの役に立ちたいという思いに変わる。

それを原動力にして社会システムも変化する。働くことを含め、個人はより自立的・主体的に生きる機会が得られ、多様な価値観を認め合い、多元的におのおのの可能性を発揮する社会を創造できる。万人の潜在力がフル活用できる時代がやってくる。技術の進化を、人間の生きがいに結び付けられる超長寿社会を期待したい。

本稿は当社機関誌『フロネシス14号 働き方の未来』掲載の「平均寿命が100歳を超えたら」をもとに加筆編集したものである。

[図]100歳以上の人口推移と見通し

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