マンスリーレビュー

2017年8月号 次世代インフラ

日本企業がインフラ輸出競争で技術力を証明するには

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2017.8.1

次世代インフラ事業本部石原 嘉一

次世代インフラ

POINT

  • 日本企業はインフラ輸出に必要な証明文書に対して十分な認識をもつべき。
  • 海外勢は体系化された文書活用により、インフラ全体の品質保証を徹底。
  • 現場任せではなく、経営上の重要課題として文書活用の仕組み化を。 
 日本のメーカーや建設会社が、海外でのインフラ案件の工期遅延や採算悪化に見舞われる例は少なくない。高い技術力で顧客の多様な要望に応じることは得意だが、現地で必要とされる許認可やシステムの安全性を保証する認証の取得に、予想外の時間と労力を費やしているのが原因だ。

 確実なインフラ輸出には、製品や設備だけでなく、納入する物が相手国の技術と品質の基準を満たしていることを証明する文書の提出も不可欠である。しかし、日本企業は国内の商慣習と同じ感覚で応じてしまい、海外の許認可や認証の手続きへの取り組みが甘くなる傾向にある。ガラパゴス化とも言える現象であろう。

 世界のインフラ市場で大きな存在感をもつ海外勢のスタンスは違う。ルールが体系化された文書を生み出す「ドキュメンテーション」と呼ばれる手法を通じ、インフラ全体の品質を顧客に保証する。具体的には、許認可や認証の取得を含め、顧客からの要求事項について詳細を詰めた上で作成した文書をもとに、交渉や議論を行って理解を深め、条件をすり合わせる。討議の結果はその都度、あらためて文書化しておく。

 ドキュメンテーションの過程では「顧客要求の解釈に関して双方で合意が得られているか」「設計変更などの情報が管理され、最新版の文書に反映されているか」などの細かいチェックが存在する(図)。この工程を対象案件のマネジメントに組み込み、受注から納品まで見返しながら徹底的に適用する。これにより、製造や工事の工程に入った後に顧客と見解の食い違いが生じる余地が小さくなり、事業が円滑に進む。

 日本企業は現場レベルであらゆることに対応しがちである。現場任せによってドキュメンテーションに限界が生じていることが、根本的な解決を妨げている。受注が比較的に好調な鉄道分野でも同様な状況と聞いている。日本のインフラ各社には、ドキュメンテーションを経営課題として仕組み化し、積極的に現場のマネジメントを支援するよう提案したい。技術で優れても、その証明に苦戦するという「もったいない」状況は、早めに改善されるべきであろう。
[図]ドキュメンテーションの適用イメージ

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