コラム

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改正JAS法が施行

新規格で日本の食材を海外ブランドに

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2018.7.18

地域創生事業本部濱田美来

MRIトレンドレビュー
2018年4月1日に改正JAS法が施行され、日本農林規格(JAS規格)が新しくなった(以下、新JAS)。JAS規格とは、食品や農林水産物の主に品質に関して、農林水産大臣が定める国家規格である。主要な改正点は二つある。

一つは、従来のJAS規格(以下、旧JAS)は製品の材料や配合割合など、いわゆる「モノ」を保証する基準であったのに対し、新JASでは、対象が原材料の生産地や生産方法、取り扱い方法、試験方法などの「プロセス・方法」にまで適用範囲が拡大された点である。これは、HACCP(※1)やGAP(※2)、MSC認証(※3)など近年の食品に関する規格や基準が、最終製品の品質だけでなく、プロセスも管理するようになってきていることと合致している。

二つ目は、これまでは国が規格の内容を定めていたが、食品事業者や産地の生産者など民間の提案で規格を作ることができるようになったことにある。旧JASは、消費者に良いイメージを与える商品に対してある成分が一定以上含まれていることなどの基準を設けるための“規制”であり、粗悪品の取り締まりに寄与した。新JASは、規制のみが目的ではなく、民間の発想で、改正法の範囲内でビジネス展開に有利な規格を策定できる。

改正の背景には、海外市場での日本の農林水産物や食品の競争力を強化する狙いがある。近年、食品の取引がグローバル化したのに伴い、国際的な規格・認証(※4)の重要性が増している。食文化や商習慣が異なる海外市場において、品質や安全性を保証するために規格・認証が活用されている中で、JASも国際的に通用する規格となることを目指している。

このような規格・認証の代表的なものとしてはGFSI(※5)のベンチマーク規格やCODEX(※6)規格がある。だが、GFSIは食品安全、CODEXは消費者の安全や国家間の共通ルール設定を目的としており、いずれも高品質であることを担保するものではない。こうした中で、新JASの活用方法として最も有効であると考えられるのは、日本産品の品質をグローバルに担保し、ビジネスに活かしていくことである。

規格・認証を活用して模造品や類似品を排除し、ビジネス化に成功している例としてはフランスのシャンパーニュ地方特産のワイン「シャンパン(シャンパーニュ)」がある。フランス国内のAOC(Appellation d'Origine Contrôlée:地理的表示保護制度)に基づき、産地、原材料、製法などが細かく規定されており、これがWTO下でもTRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)(※7)として認められ、国際的にも通用するルールとなっている。そのため、他の地域で同じような発泡性のワインを製造しても「シャンパン」と名乗ることはできない。実際、シャンパンは同等の製法、品質の品物と比較しても高値で販売されており、ビジネス化に成功している。

WTOなどの国際協定として認められるには、国際的なネゴシエーションが不可欠であるが、中小規模の事業者が多い食品産業では、個社ではそこまでの対応は難しい。旧JASは国内での規格を想定していたため、これまで、国による国際的な働きかけも積極的には行われてこなかった。日本食が世界の注目を集めている中、日本の食材や食文化のビジネスチャンスは確実に広がっている。今後、国際的な商材に関して新たなJAS規格を積極的に活用する取り組みを官民連携で進めていくことが必要である。
図 規格・標準のカバー領域イメージ
図 規格・標準のカバー領域イメージ
出所:三菱総合研究所

※1 Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。ハサップ。食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法。(出所:厚生労働省HP HACCPとは? 閲覧日:2018年5月15日http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html

※2 Good Agricultural Practice。農業生産工程管理。

※3 Marine Stewardship Council。海洋管理協議会によって、海洋の自然環境や水産資源を守って漁獲された水産物に与えられる認証。

※4 ここでは、「規格」は製品や製造工程などについて定めた基準、「認証」はある規格に適合しているかどうかを第三者が認定して保証するシステムを指す。

※5 Global Food Safety Initiative。グローバル企業が参加する食品流通・製造のネットワークであるCGF(The Consumer Goods Forum)の傘下で食品安全を推進する組織。

※6 国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が作った国際的な食品規格。

※7 WTO協定のもと、知的財産権の保護を目的とする条約で、地理的表示についても定められている。知的財産権の権利行使に関する規定があり、権利保護が可能となる。