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2017年2月号数字は語る経済・社会・技術

42%─サービス支出割合は横ばい:原因はサービスの内部化

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2017.2.1

政策・経済研究センター佐野 紳也

経済・社会・技術

サービス支出割合の増加傾向が止まる

最近「モノ消費からコト消費へのシフト」という記事を新聞などで目にする。これは物品の購入が減少し、体験型のサービス支出が増加することを意味するが、その割合は2010年以降、42%と横ばいである(図)。

背景には、サービスの成熟化(普及率が上限近くになり成長率が低い状態)に加え、「内部化」がある。つまり、出来合いのサービスを利用せずに自前で同等のサービスを実現することだ。食料支出*1でみると、2010~15年における調理食品(中食)支出の年平均増加率は2.4%、調理食品以外は1.1%、外食は1.0%である。サービスの外食支出がモノの中食支出を下回っている。昨年注目された「家ナカ」クリスマスもその一例だ。外食するより、自宅を飾り付け、フライドチキンやケーキなどを買って家族や友人と食べる人が増えている※2

旅行支出※1も、2010~15年のパック旅行の年平均増加率が▲1.7%であるのに対し、宿泊料の増加率は2.8%である。旅行代理店を通さず、自ら宿泊施設や交通手段を手配したり、マイカーを利用する割合が増えており、個人旅行へのシフトが進んでいる。

サービスの内部化が新たな市場を創出する

サービスの内部化は周辺産業の拡大にも寄与している。高度なサービスを提供する家電(ホームベーカリー、家庭用の製麺機やエスプレッソマシンなど)の価格が下がり、性能が向上している。オンラインでは料理レシピサービスや国内外の交通機関・宿泊予約サービスが充実している。また健康分野では、マッサージ器やマッサージチェアの利用が進んでいる。人間ドックの代替に、今後は自宅で測定できる唾液、尿、血液などの検査機器・キットの利用も広がるだろう。美容分野では、エステティックサロンに代わり、美顔器、美顔ローラー、家庭用脱毛器などを使用する人が増えている。

日本ではかねてよりサービス業の生産性の低さが指摘されている。簡便にニーズを満たすことで消費者のQOLが向上するとともに、サービス業の労働力不足緩和といった効果も期待できるだろう。

※1:総務省「家計調査」。

※2:2016年12月15日付日本経済新聞朝刊。