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2017年2月号トピックス5経済・社会・技術人材

AI・ロボット・IoEが変える2030年の日本

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2017.2.1

政策・経済研究センター白戸 智

経済・社会・技術

POINT

  • AI・ロボット・IoEという三大技術による「第四次産業革命」が進行中。
  • 2030年までに500万人の新規雇用創造と740万人の既存雇用喪失の可能性。
  • 新規に創出される雇用への転換を円滑に進め、豊かな末来につなげよう。
AI・ロボットなどの新技術による社会と産業の変革、いわゆる「第四次産業革命」が進行している。次は数兆個のセンサーにより世界がつながるInternet of Everything、すなわちIoEの時代である。センサー、ウエアラブル機器、自動運転車などあらゆるものから集められるデータが、新たなビジネスやサービスを生み出し、その結果、雇用や働き方などわれわれの生活を一変させる。

当社では、将来シナリオ想定に基づき、この第四次産業革命による日本の社会・経済への影響を試算した(図)。機械による「人間の代替」により、2030年までに商業、建設業、各産業分野のホワイトカラーなどで日本の従来雇用は740万人減少する。一方で、「人間と機械の協調」「人間の能力拡張」「人間の活動空間拡大」などの新たな領域で、AI・ロボットなどのシステム創造に関わる技術者、それを活用した新たな製品・サービス提供の従事者など、500万人の新たな雇用が創出される。

失われる職から創出される職への雇用転換が実現できれば、雇用喪失は差し引き240万人にとどまるのに対して、転換が進まなければ740万人がそのまま雇用喪失となり、大きな社会影響は避けられない。一方、前者であれば、影響は比較的小さく、今後人口減少・高齢化進展で懸念される労働力不足の緩和要因と捉えることもできる。

では、円滑な雇用転換はどう実現するのか。よき手本となるのは、社会保障と職業訓練の組み合わせで、より安心して転職できる社会を実現した欧州のフレキシキュリティー施策であろう。だが、第四次産業革命への対応には、それにとどまらず社会全体の変革、例えば採用通年化やワークシェアなどによる多様な雇用機会の創出、新技術を使いこなす力を養成する基礎教育からの教育改革なども重要となる。雇用の受け皿となる新たな産業を育てるためには、ベンチャーや中小企業が大企業と対等に活躍できるオープン・ネットワーク型の産業構造への転換も欠かせない。避けられない変化を正しく恐れ、むしろ積極的に適応することで「革命」の果実を最大限に享受したい。
[図]第四次産業革命の社会影響の5視点と2030年の社会シフト(当社試算)