デジタル技術の進展を背景に、一つの要素技術を製品やソリューションに多面展開する、分野を超えたイノベーションが盛んである。その中で、軍用と民用をまたいだイノベーションにデュアルユースがある。例えば、レーダーやGPSは軍用技術として開発された後、民間で気象用レーダーやスマートフォンなどに広く利用されている。ロボット技術は、戦場で危険物を処理する装置に使われると同時に、原発事故に伴う瓦礫処理の装置や家庭用ロボット掃除機としても利用されている。
従来、最新鋭の装備品に使われる軍用技術と一般産業で使われる民用技術には、求められる耐久性が異なるなど、技術的、コスト的に大きなギャップがあり、デュアルユースの機会は限定的だった。しかし最近は、センサー用半導体素子や複合材料など、多くの安くて高性能な民用技術が国防の現場に持ち込まれている。また、ビッグデータ解析やAI、サイバーセキュリティーなどのIT技術は本来的に用途が限定されるものではない。そのため、アメリカ国防総省は積極的に投資を始めている(表)。
これまでデュアルユースにあまり関心をもたれてこなかった日本でも、最近は機会が増えており、防衛省は、基礎研究のためのファンディング制度を創設した。研究テーマを公募して研究資金を提供する制度で、自衛隊の航空機や車両といった装備品の調達に直接関係しない基礎研究を支援することが特徴だ。企業にとっては新しい資金調達先の一つとなる。また、装備品についても国際共同開発の場を開拓し、デュアルユースの機会を企業に積極的に提供し始めている。国際共同開発に参画すれば、新しい海外の研究開発パートナーを発掘し、海外での市場を拡大することもできる。
デュアルユースは、軍用技術の世界への拡散によるリスクという観点で注意が必要であり、武器輸出規制など政府が定めるルールに従って、エンドユーザーを確認していくことが重要である。その上で、防衛省は制度の活用が進むように積極的にPRし、企業もそのメリットを理解することで、デュアルユースが日本の新たなイノベーションを促進するきっかけとなるだろう。
従来、最新鋭の装備品に使われる軍用技術と一般産業で使われる民用技術には、求められる耐久性が異なるなど、技術的、コスト的に大きなギャップがあり、デュアルユースの機会は限定的だった。しかし最近は、センサー用半導体素子や複合材料など、多くの安くて高性能な民用技術が国防の現場に持ち込まれている。また、ビッグデータ解析やAI、サイバーセキュリティーなどのIT技術は本来的に用途が限定されるものではない。そのため、アメリカ国防総省は積極的に投資を始めている(表)。
これまでデュアルユースにあまり関心をもたれてこなかった日本でも、最近は機会が増えており、防衛省は、基礎研究のためのファンディング制度を創設した。研究テーマを公募して研究資金を提供する制度で、自衛隊の航空機や車両といった装備品の調達に直接関係しない基礎研究を支援することが特徴だ。企業にとっては新しい資金調達先の一つとなる。また、装備品についても国際共同開発の場を開拓し、デュアルユースの機会を企業に積極的に提供し始めている。国際共同開発に参画すれば、新しい海外の研究開発パートナーを発掘し、海外での市場を拡大することもできる。
デュアルユースは、軍用技術の世界への拡散によるリスクという観点で注意が必要であり、武器輸出規制など政府が定めるルールに従って、エンドユーザーを確認していくことが重要である。その上で、防衛省は制度の活用が進むように積極的にPRし、企業もそのメリットを理解することで、デュアルユースが日本の新たなイノベーションを促進するきっかけとなるだろう。