マンスリーレビュー

2017年2月号トピックス4経営コンサルティング海外戦略・事業

ベトナム自動車産業に日系企業の出番はあるか

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2017.2.1

海外事業推進センター櫻田 陽一

経営コンサルティング

POINT

  • 2018年以降、ベトナム自動車産業は輸入完成車との競争にさらされる。
  • ベトナム政府は2035年の国産車製造台数目標値を150万台強に設定。
  • ベトナム企業の生産体制強化に日系企業のアクションが求められている。
ベトナムは2000年以降、経済成長率が6.8~7.8%と高く、タイ、マレーシアなどのASEAN先発国に続く有望市場として注目されている。同国の自動車産業は、国内の旺盛な需要を背景に、堅調な成長が見込まれる。部品が2万点以上に上る自動車産業の振興は、関連産業が多いことから一国の経済成長に最も威力を発揮するといわれる。ベトナム自動車工業会によると、2015年のベトナムの自動車販売台数は約24万5,000台で、うち約17万3,000台は国産車である。国産車は主要部品を輸入し国内で組み立て販売するものを指し、全体の約7割を占め、対前年比48.5%増に達している。

ASEANではタイが東洋のデトロイトと呼ばれて久しい。2015年の同国の国内生産台数は約190万台※1とベトナムの8倍ほどで、第三国への輸出拠点として大きく発展している。2018年にはASEAN自由貿易協定に基づいて輸入完成車の関税が撤廃される。関税漸減の影響で近年輸入車が増えており、関税撤廃後のベトナム国産自動車業界が輸入完成車との厳しい価格競争にさらされることは確実である。さらにその先にはEVや自動運転などの新技術の普及による競争激化も予想される。

このような状況のもと、ベトナム商業工業省は自動車を主要産業と位置づけ、2016年2月に国産自動車産業振興のための政令「自動車産業開発戦略」を公布した。その中で2035年の自動車国内生産台数を150万台強と見積もり、内需の80%を国産車で賄うという政策目標を掲げた。

現在、ベトナムではローカル・外資を含め自動車メーカーが20社ほどあるが、部品供給を担うサプライヤーの規模も技術レベルも将来需要に対し十分ではない。ここに日系自動車部品メーカーのビジネス・チャンスがあり、進出する余地が残されている。

すでに進出済みおよび今後進出する日系自動車関連メーカーは、ローカル企業への新技術を含めた技術移転により、自動車の品質向上と生産コストが圧縮でき、ベトナムの国是である国内自動車産業育成に貢献できる。今まさに、日系企業のアクションが求められている。

※1:ASEAN Automotive Federation 2015.

[図]ベトナムの国産自動車生産台数と国内販売店の推移