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2017年7月号トピックス4経営コンサルティング

新興国向けの知的財産権として意匠権の活用を

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2017.7.1

科学・安全事業本部河合 毅治

経営コンサルティング

POINT

  • 日本企業が新興国での事業を成功させるには知的財産権の活用が重要。
  • しかし立証に手間やコストがかかる特許権には限界がある。
  • コストや手間が相対的に少なく見た目で判断できる意匠権を活用すべき。
日本企業の海外展開では先進国だけでなく、アジアの新興諸国も有望な市場となっている。しかし、アジア諸国では知的財産への意識が低く模倣品がまん延している。

経済協力開発機構(OECD)と欧州連合知的財産庁(EUIPO)の調査※1によれば、2013年の模倣品総輸入は、世界全体の輸入額の約2.5%に当たる4,610億ドル(約50兆円)。このうち日本企業の割合は8.2%に上る。また、世界全体で摘発された模倣品の84%までが、香港を含む中国で製造されていた。 アジア諸国全体では90%超だった。

対策としては知的財産権の活用を通じて模倣品の生産や流通を抑えるのが最も一般的である。しかし、新興国においては、発明を保護する特許権の実効性に限界がある。登録の要件として新規性・進歩性が求められハードルが高い割に、模倣品を作られた際の侵害立証に専門知識を要するからだ。このため、取り締まり体制が不十分で技術を判断できる専門家が少ない新興国では、活用が難しいという問題点を抱えている。

そこで、新興国での知的財産保護には、外形デザインを対象とする意匠権が有効と考えられる。見た目での判断が可能なため、特許権と比べると侵害の立証が容易で、コストも相対的に低い。また、商品やサービスに付けられるマークを保護対象とする商標権よりも便利な点がある。特定のロゴなどを付けずに販売される模倣品に対抗できるからだ(図)。日本は2015年に、海外を含めた意匠権の一括出願を可能にするハーグ協定に加盟した。中国などが未加盟なため、現段階ではその恩恵は限定的なものの、将来的には日本企業にとって力強い武器となるだろう。

参考になる例としては、タイヤが路面と接する部分に刻まれる模様であるトレッドパターンが挙げられる。トレッドパターンには排水や摩擦抵抗といった技術やノウハウが詰め込まれており、意匠権で保護されるケースが多い。実際にブリヂストンは中国企業との間で、トレッドパターンをめぐる意匠権侵害訴訟に相次いで勝訴した。こうした実績を経て、意匠権に対する認識も見直されつつある。

※1:OECD「Global trade in fake goods worth nearly half a trillion dollars a year - OECD & EUIPO」

[図]知的財産権の種類

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