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2017年7月号トピックス6経済・社会・技術経営コンサルティング

直接投資収益改善のための海外投資基準

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2017.7.1

政策・経済研究センター猪瀬 淳也

経済・社会・技術

POINT

  • 日本の直接投資の収益率は、先進国内で低い水準にとどまる。
  • 海外進出の主な動機は海外の需要増への対応。収益性の重視度は高くない。
  • 収益性を改善するために、明確な収益水準値を設定するべき。
2017年5月に発表された2016年度の国際収支速報では、海外投資の収益を表す第一次所得の受取額が7.6%減の27兆5,192億円となった。日本の対外直接投資が年々加速している中で受取金額が減少することは、日本の海外投資収益性が悪化していることに他ならない。日本の収益率は平均7%まで低下した。一方、米国は平均で10%近い収益率を維持している。

これには日本企業の海外投資に対するスタンスが大きく影響している。日本企業が海外に進出する理由※1として、8割を超える企業が「海外での需要の増加」を挙げている。「海外市場の高い収益性」を挙げている企業は1割強にとどまる。日本企業の多くは海外市場を売上高や利益額を増やすための新たな手段としてのみ捉えており、投資効率や収益性を最優先に考える企業が少ないことが現状の低い収益性につながった。

それでは海外への投資はどのように考えればよいのか。その答えは投資基準の設定方法の中にあろう。海外投資経験を有する企業の中で、海外向けの投資基準がないという企業は少ない。しかし、収益水準の設定にあたって、地域ごとにリスクや収益水準が異なっているという点も十分加味できている企業は少ないのではないだろうか。収益水準の設定に当たって参考となる値の一つは業界平均の収益水準値を取得することだが、日銀や米商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis:BEA)は「地域×産業」ごとの平均直接投資収益率を公開している。こういった情報を用いれば、少なくとも業界の平均として、どの地域にどの水準の収益性を求めればよいかというベンチマークを設けることができる。

表では、日米の投資収益率を産業別、地域別(アジアと欧州)に比較した。ほとんどのケースで米国の投資収益率が日本を上回る中、卸売業では欧州、アジア両地域における日米の投資収益率が拮抗している。アジアでの電気機械、欧州の金融では日本の収益率が米国をやや上回る。海外に投資する日本企業は、こうしたセグメント化されたデータを参考に投資ポートフォリオを策定する必要があるだろう。

※1:JETRO「2016年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」

[表]産業別対外直接投資率の日米比較(日本における投資額上位5業種)

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