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2017年7月号 ヘルスケア・ウェルネス

健康状態と生産性を関連付ける「通知表」を導入しよう

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2017.7.1

ヘルスケア・ウェルネス事業本部大橋 毅夫

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 人手不足により企業が「健康通知表」を導入する機が熟している。
  • 政府の健康増進策を受けて健保が蓄積したデータなどを点数化。
  • 通知表を公表すれば外部評価アップなどで労使双方に恩恵。  
 労使双方に利がある「働き方改革」を、医療・健康面から進める機が熟している。人手不足の深刻化に伴い、大企業だけでなく中小企業の経営者も、従業員の満足度や疾病による離職リスクに多大な関心を寄せるようになったことが背景にある。

 企業最大の健康関連コストは従業員の医療費ではなく、出社できていても心身に 問題を抱え業務効率が落ちる「プレゼンティーイズム」に8割弱が起因する*1。こうした見えにくいリスクをあぶり出すため、従業員の集団としての健康状態と企業の労働条件を点数化し、生産性への影響度を評価する「健康通知表」の導入を提案したい。

 通知表のもととなる健康関連データは、すでに健康保険組合がもっている。政府は2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」で、全ての健保に対し、健診データやレセプト*2などをもとに抽出した課題を踏まえ、加入者の健康保持・増進を図る「データヘルス計画」の作成を求めた。それから約4年を経て、各健保は従業員の健康関連データの分析を通じた効率的な保健事業を展開できるようになってきた。

 国民の健康寿命延伸や適正な医療などを目指して2015年7月に民間主導で発足した組織「日本健康会議」の後押しにより、従業員の健康関連コストなどを明示する「保険者スコアリングシート(仮)」も計画されている*3。経営者が従業員の健康状態を把握できる環境は整っているのだ。この状況を利用しない手はない。データを集約する基盤さえ整えば、個別の健保や会社の健康状態を、ほかの組織や全体の平均と比較するのは難しくはない。

 従業員の健康状態と生産性との相関関係が通知表の上で「見える化」され、他社との違いや自社の強みと弱みが明確になれば、経営者は意識変革を迫られ、健康経営の促進に努めるだろう。通知表の内容を公表していれば、成績がアップした場合、世間にアピールできる。そうすれば従業員の満足度向上だけでなく、企業価値増大や人材確保にもつながり、経営者の利点も大きい。通知表は、国が進めてきた各種施策と経営者の危機意識とを活用した、社会課題解決の新たなツールとなり得る。
[図]健康通知表のイメージ

*1:東京大学政策ビジョン研究センター「コラボヘルスで健康関連総コストを可視化」の図1を参照。

*2:医療機関が保険者に対して医療費を請求するために発行する診療報酬明細書。

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