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2017年7月号トピックス3デジタルトランスフォーメーション

ものづくりの伝承をデジタル技術で補完する

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2017.7.1

ものづくり革新事業センター大川 真史

デジタルトランスフォーメーション

POINT

  • 後進へ「デジタルものづくり伝承」を行うのにはコツがある。
  • 重要なのは何でもデジタル化すれば伝承できると考えないこと。
  • 伝承する技能を見極めつつ次代の人材を育成することが大切。
ものづくりの現場でよく聞く悩みが、「熟練技術者の知恵を後進に伝承できない」ことである。団塊世代のベテランの退職と若年労働者の減少による影響が深刻化し、さらに製造拠点のグローバル展開や製造プロセスの水平分業が進展する。世代間と現場間に必要なものづくり伝承は喫緊の課題である。

熟練者のノウハウや経験値は、ものづくりの本質を体感的に究めた結果身に付くもので、容易にはまねできない。よって、これを伝承するすべとして、現場で切磋琢磨しながら一緒に働く熟練者からの引き継ぎが主流となっている。無意識に使っている知恵や判断基準が多く、伝承方法が個人や人間関係に依存し、習得に時間を要する。人から人へと伝えるにしても、技能のすべてを言語化するのは難しい。この弱点を補うため、人工知能(AI)やロボットなどデジタル技術の活用が期待されている。

デジタル技術を活かすコツは、①熟練者の行動情報を収集してデジタルデータ化、②データ分析から明文化された技能の学習、③熟練者と協働して技能を再現化、の3要素を循環させることにある。ある板金加工メーカーでは、ベテラン技術者の言葉でのやりとりをメッセージツールで蓄積し、そこから抽出したノウハウをほかの人が学習し、実際に再現できるまでベテランから学び続けている。同様に、スマートフォンで撮った熟練作業の写真や動画を蓄積し、業務マニュアルを作成することで、ノウハウを見える形に転換し、技能の再現性を確保する事例も見受けられる。

実践する際に重要なのは、何でもデジタル化すれば伝承できると考えないことだ。人から人へと伝えるためには、世代間や現場間で異なる価値観やデジタル親和性に配慮することが第一である。その上で、伝承する技能を特定して、伝承の必要性を世代間で共有し、お互いに手軽に利用できるデジタルツールを活用することが賢明である。伝承の主体は、あくまでも人である。人が活かされ、次世代の成長につながり、組織の足腰を鍛える。デジタル技術は補完的なものとして、導入できるところから取り入れ、技術進歩に合わせて高度化を図るのが現実的かつ効果的である。
[図]デジタル技術を活かすための循環要素

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