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2017年7月号トピックス5経済・社会・技術

非製造業の研究開発が新市場をもたらす

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2017.7.1

政策・経済研究センター酒井 博司

経済・社会・技術

POINT

  • 研究開発投資は生産性アップを通じて経済成長を下支えできる。
  • 日本は非製造業の研究開発投資が少ないため、米国に比べ生産性が低い。
  • 農業や介護、医療など伸びが期待できる部門にシフトして新市場創造を。
日本では今後、世界でも例を見ないペースで少子高齢化が進行する。それに伴う労働力人口の減少は、成長率への下押し要因となる。しかし生産性を引き上げられれば経済の実力を示す潜在成長率の低下に歯止めをかけられる。そして、生産性の向上には、持続的な研究開発活動が欠かせない。

技術進歩分に相当する全要素生産性(TFP)は、研究開発投資と比例的な関係にある。だが、日本は米国などの先進国よりも国内総生産(GDP)に対する研究開発投資の比率が高いにも関わらず、TFPは低い(図)。

その理由は日米の研究開発動向の違いにありそうだ。非製造業の比重が高まる「サービス経済化」は先進国共通だが、この流れへの対応は大きく異なる。国内の研究開発投資に非製造業が占める割合は、米国の31%に対し日本は12%にすぎない。さらに情報通信と専門・技術サービスを除いた非製造業の同割合は2%にとどまっている※1

TFPは、異業種間で事業の融合が起き、新たな市場を創造することなどによって上昇する。米国では、流通や運輸、金融といった非製造業部門が研究開発投資を通じてほかの業種の技術を取り込むことで新たなビジネスを生み、TFPの上昇を加速させた。逆に日本では、非製造業における研究開発投資の乏しさが、新たなビジネスの創造機会を減らし、TFPを停滞させている。

日本では現在、研究開発の成果として蓄積される特許や技能などの知識ストックが製造業に偏在しているが、その製造業はGDPの21%を生み出しているにすぎない※2。非製造業が研究開発を積極化させてサービスの高度化を進め、製造業が生み出すハードとの親和性を強めれば、社会ニーズをビジネスチャンスに変える能力は高まる。

例えば日本の急速な高齢化の進行は、医療ニーズを多様化する。また、質的な豊かさを求める社会で「食の安全」は重要なキーワードである。医療や介護、農業といった非製造業部門が技術力を高めて多様なニーズに対応すれば、成長市場の創造、ひいてはTFP向上につながるだろう。

※1:文部科学省科学技術・学術政策研究所、「科学技術指標2016」から引用。日本は2012~2014年、米国は2010~2012年の3年平均。

※2:名目GDP比の2015年実績。正確には20.5%。内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算年次推計」から引用。

[図]研究開発と生産性の関係:国際比較

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