マンスリーレビュー

2019年1月号トピックス5経営コンサルティング海外戦略・事業

ESG・SDGsがグローバル経営の鍵

同じ月のマンスリーレビュー

タグから探す

2019.1.1

海外事業本部越智 麻美子

経営コンサルティング

POINT

  • 企業のESG・SDGsへの取組状況を投資家が重視するようになった。
  • 共通言語SDGsの活用はESG情報開示の観点からも有効。
  • ESGを経営課題と捉え、戦略に組み込む体制が必要。  
投資家の間では、企業活動の経済面だけでなく、環境・社会面も含めて評価するサステナビリティの考え方が広がっている。とりわけESG※1やSDGs※2は関連するキーワードとして急速に注目を集めている。

2008年のリーマン・ショック以降、投資家は短期志向への反省から投資先企業の持続性を重視し、環境・社会・ガバナンスへの取り組みを評価するようになった。その結果、ESG投資は世界で2,500兆円に達し、GSIA※3によると欧州では2016年時点で全運用資産額の5割を超えている。株式持ち合い解消が進む日本でも、こうした長期的視点を持つESG投資家の動きは無視できない。

企業サイドでも、特にグローバル企業はESGを軸にした事業活動へと動きだしている。ユニリーバやネスレなど、取り組みをリードしてきた欧州企業は、ESGに配慮したサプライヤーを評価し選別するようになっている。欧州に続き米国でもウォルマートが取り組みを本格化した。世界中のグローバル企業のこうした動きを受け、政府や経団連も日本企業に対してESG経営の推進を求めている。

ESGに取り組むうえで大切なのは、情報開示と組織体制整備の2点である。このうち、情報の開示による透明性向上は、第三者の正当な評価を引き出すための第一歩となる。環境NGOなどからの指摘・照会を懸念する企業もあるが、投資の呼び込みにつながるだけでなく、透明化することで企業体質の改善も図られる。さらに世界共通語であるSDGsに関連付けることによって長期的に社会から求められる企業であると、投資家にアピールすることが可能だ。

組織体制整備の上で重要なのは、単独部門がESGを推進するのではなく、IR、法務、調達など部門横断型の組織で対応することだ。部門横断組織と経営が連携すれば関連する重要な課題を経営戦略に組み込み、実践に落とし込むことができる。

今日、あらゆる企業が急速なグローバル化の波を避けられない。世界的な取り組みを日本企業の競争力強化の追い風としたい。

※1:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字。こうした非財務情報を考慮した投資や経営をESG投資、ESG経営と呼ぶ。

※2:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)。2015年9月の国連サミットで採択された2016~2030年の国際目標で、持続可能な世界を実現するための17のゴールが示されている。

※3:世界持続的投資連合(Global Sustainable Investment Alliance)。ESG投資を推進する米国・欧州・アジアの団体の連合であり、ESG投資の資産規模を推計している。
http://www.gsi-alliance.org/wp-content/uploads/2017/03/GSIR_Review2016.F.pdf

[表] ESG分野をリードする欧州企業の取り組み
ユニリーバの情報開示への取り組み ネスレのESG推進体制
  • ステークホルダーとの対話を重視し、世界80カ国から参加者を募ったウェブイベントを通じて意見を集約
  • 自社の環境・社会・ガバナンス関連情報を事業計画とSDGsにひもづけて毎年進捗を報告
  • CEOをはじめ、コミュニケーション、事業、戦略ビジネス、営業などの各統括責任者が参加する社内組織が、取締役会を非財務観点から支援
  • 企業理念である共通価値の創造とマテリアリティ(CSR領域における重要課題)を意識しつつ、ESGに対する投資や戦略を計画・実施