マンスリーレビュー

2019年1月号トピックス1地域コミュニティ・モビリティ

ビッグデータを活用した政策立案を

同じ月のマンスリーレビュー

タグから探す

2019.1.1

次世代インフラ事業本部牧 浩太郎

地域コミュニティ・モビリティ

POINT

  • 政府主導で「証拠に基づく政策立案」が進められている。
  • 英国では官民の連携組織が「証拠づくり」を積極的に実施。
  • 日本もビッグデータ活用と科学的分析による政策立案に着手を。  
現在、政府主導で「証拠に基づく政策立案(EBPM: Evidence Based Policy Making)」の導入が進められている。政策立案にあたっては従来、定性的な分析や公的統計を活用しつつも、時系列的な変化や地域間の差異のような簡単な分析に基づくものが多かった。これに対しEBPMでは、「ランダム化比較実験」※1などモデルを用いた定量的分析によりエビデンスの精度を高める方針である。導入論議では、「現在の政策目的が的外れでないか、本来の目的は何であるかを虚心に考え、データなどを用いながら確認する姿勢がEBPMには必要不可欠」との有識者の意見も出ている※2

いち早くEBPMへの取り組みを開始した英国では、行政と大学・民間企業などが連携して、より説得力のあるエビデンスをつくる組織「What Works Centre」を設置した。その上で「民間企業が独自にもつデータ」「科学的な分析に熟練した研究者による成果」を、政策立案へ積極的に活用している。

日本では行政職員が政策立案のエビデンスをつくることが慣例で、行政以外の組織(大学や民間企業)がもつ分析技術やデータは補完的な位置づけにとどまってきた。しかし最近では、新たな動きも見られるようになっている。例えば、内閣府の「地域経済分析システム(RESAS)」では、民間企業の保有データを活用して「行政の区域にとらわれない産業振興に必要な企業間取引の可視化」「インバウンド誘致に必要な外国人旅行客の動態」などに関する分析を行っている。

民間企業は近年、製品やサービスへのIoT導入を急速に進めており、多様なデータを容易に取得可能になった。大学や研究機関がこうしたデータの分析を引き受けるならば、政策立案のエビデンスの客観性や説得力をさらに高めることができるだろう。

「多様なデータの活用」と「科学的な分析」はEBPMを加速させる両輪となり得る。その母体として日本版What Works Centreを立ち上げることには、チャレンジする価値があるのではないだろうか(図)。今こそ、産学官の強みを活かした政策立案の実現を目指すべきである。

※1:分析対象となる人や企業などを無作為(ランダム)に二つの集団に分けて比べることで、信頼性を高める実験手法。

※2:行政改革推進本部事務局の2017年11月29日付資料「EBPM推進の『次の一手』に向けたヒント集」(p5)より。

[図]EBPM推進への有効な手法