マンスリーレビュー

2019年1月号トピックス6経済・社会・研究開発

米中貿易摩擦のあとに待つ対外直接投資競争

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2019.1.1

政策・経済研究センター谷口 豪

経済・社会・研究開発

POINT

  • 米国では、対外直接投資を巡る動きが活発化。
  • 米中の投資規模が伯仲する中、熾烈な投資競争を起こす可能性も。
  • 日本の課題は、経営の意思決定の迅速化と米中双方との協力体制。  
米国では、対外直接投資(FDI)を巡る動きが活発化している。2018年10月には、海外民間投資公社(OPIC)や国際開発庁(USAID)などの一部を統合し、新しい開発金融機関を設立する法案が成立した。海外インフラへの投融資枠を倍増させる方針が盛り込まれており、今後、諸外国における米国の投資増加が見込まれる。

背景には、中国によるFDIの増加がある。一帯一路構想に代表されるように、中国による世界での投資の拡大は著しい。しかし、その進め方には批判も多い。2017年、スリランカ政府は中国からの融資で港湾を整備したが費用を返済できず、港湾管理会社の株式の70%を向こう99年間、中国国有企業に譲渡する結果となった。ペンス米副大統領は、中国が新興国において行っている不透明な融資条件に基づいた投資を「債務外交」と批判している。米国には自らのFDIを増やすことで、中国資本に代わる公正で透明な選択肢を第三国に提供するとともに、中国の影響拡大を牽制する狙いがある。

今後、世界における投資構造はどう変化するだろうか。当社の試算※1によれば、世界全体のFDIに占める米中のシェア(フロー)は、2030年には合わせて約50%に達する(図)。さらに、中国によるFDIの規模は米国に肉薄することが予想され、米中が第三国において熾烈な投資競争を引き起こす可能性もある。

米中による対外直接投資競争が予想されるなかで、日本には課題がある。まず、企業の課題は、経営における意思決定の迅速化だ。海外企業買収などにおいて、これまで以上に米中企業との激しい競争にさらされることになれば、遅緩な意思決定が原因となり競り負けることが起きかねない。

次に政府の課題としては、FDIにおける米中双方との協力体制を確立させることだ。2018年、日本は、海外インフラ投資における連携促進を、米中両国と個別に合意した※2※3。FDIにおいて米中双方との協力が見込まれるなかで、日本は今後、アジアを中心とした第三国において、国際基準に沿った透明性の高いプロジェクトを推進するとともに、日本企業の事業環境を後押しすることが求められるだろう。

※1:「米中の経常収支の状況」「本文内記載の可決法案の影響」「中国の経済成長率」「米国における過去の経常収支がFDIに与えた影響」などを基に試算した。

※2:2018年11月、日米両政府はインド太平洋地域におけるインフラ投資に関し、連携していくことを合意した。米国は、2018年10月に成立した新法によって、引き上げられた海外インフラへの投融資枠をもとに、同地域に対し、最大で600億ドルのインフラ支援を行っていく考えだ。

※3:日本政府は、中国との第三国におけるインフラ投資連携に関し、①開放性、②透明性、③経済性、④財政健全性の4条件を満たす必要があるとしている。

[図]米国、中国、日本、EUによる対外直接投資(FDI)割合の推移(1982年〜2016年実績、2018年〜2030年予測)

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