マンスリーレビュー

2019年1月号トピックス2スマートシティ・モビリティ

デジタル地域通貨で住民基点の地域創生を

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2019.1.1

地域創生事業本部北井 渉

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • キャッシュレス化は、地域ぐるみの暮らし方改革推進の大きなチャンス。
  • デジタル地域通貨を基盤に住民の行動変容と地域創生を同時実現。
  • データ連携で新たな暮らしを実現する分野間連携・官民協働も進む。  
インバウンド客増加を契機として、日本でもスマホ決済を初めとするキャッシュレス化の動きが本格化している。デジタルデータの蓄積、活用が促されることで、AI、IoTなどの技術革新と相まって、人々の暮らしやビジネスを大きく変えるSociety5.0(個の希望を実現できる社会)の実現にも寄与することが期待されている。これは2014年より推進されてきた地域創生にとってもチャンスである。人生100年時代に個々が健康で活躍できる社会づくりに向けて、キャッシュレス化を地域創生に活かす「地域ぐるみの暮らし方改革」ツールとして「デジタル地域通貨」の活用を提案したい(図)。

デジタル地域通貨導入は持続的な域内経済循環の基盤となるだけでなく、さまざまな個人ニーズの実現をデータの連携によって可能とし、地域住民の生活を豊かにする。

多くの自治体で健康づくりや互助の促進に向けて、ウオーキングやボランティア活動に応じた地元限定の買い物券などをインセンティブとして提供する取り組みが広がっている。現在は各部署所管の事業にとどまっているが、部署間でデータを相互利用できれば、住民の体力や健康状況、職歴などに見合った地域活動や就労の機会を提供するといったことも可能になる。さらに住民にとっても自身の暮らしぶりと健康状態などをスマホ上で日々確認、管理することが容易になり、「セルフマネジメント」しようとする意識も高まる。

一方、日々蓄積されるデータから住民ニーズを明らかにし、新たなサービスとして官民地域ぐるみで提供することも重要になる。「買い物は地元商店街で」という形で住民にやせ我慢を求めるのではなく、即時・近接が必要なサービスを中心に新たなビジネスを創出し、互助によって地元での担い手を確保するのである。地域通貨を基盤としてサービス提供者と地域住民が互いのニーズを実現する経済圏が生まれる。

キャッシュレス化が推進される今こそ、デジタル地域通貨というプラットフォームの構築により、地域の経済循環と暮らし方改革の両立を図り、地域創生の持続的推進につなげていくことが期待される。
[図]デジタル地域通貨による地域創生の推進