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2021年2月号特集2経営コンサルティング

東南アジアと中東の市場攻略 鍵は社会課題にあり

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2021.2.1
経営コンサルティング

POINT

  • 巨大経済圏誕生で活性化が期待できる東南アジアと中東は社会課題も山積。
  • 東南アジアは現地官民交えたプラットフォーム構築が課題解決につながる。
  • 中東では解決策をパッケージ化した上でコンソーシアムの組成を。

1.注目される東南アジアと中東

東南アジアと中東は今後、有望な市場となり得る。コロナ禍で世界全体の経済環境が厳しい中、巨大な経済圏の誕生を背景に、経済成長と社会課題解決の両立を目指すことになるからだ。生活の質の向上や脱石油依存など、解決すべき課題は多岐にわたる。

日本企業にとっても両地域は、海外展開の活路を見いだす上で重要である。高齢化や環境問題などへの対応に迫られる「課題先進国」として日本が蓄積してきた技術やノウハウを提供すれば、商機も開けるだろう。ただし、事業環境や事業機会の違いを踏まえて、両地域では異なるアプローチが求められる。

2.東南アジアの社会課題解決はプラットフォーム構築で

2020年11月、アジア・オセアニアのうち計15カ国が地域的な包括的経済連携(RCEP※1)協定に署名した。これにより、人口とGDPが世界全体の約3割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。東南アジアはこの自由貿易圏の中心に位置しており、今後、経済活動がさらに活発化することが期待できる。

その一方で、多様な成長過程にある国々で各国固有の社会課題が山積している。こうした課題の解決にうまく貢献できれば、日本企業にとっても新たな事業機会を創出できる。しかし、新しい技術やサービスを提供しているのは、現地をよく知る中国やシンガポールなどの企業が主流である。日本企業が活躍するには工夫が必要となる。

ここでは、コロナ禍により注目度が急上昇しているヘルスケアについて考えてみる。当社が2020年1月にベトナムの保健省副大臣との面談で聞いたところによると、同国では医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で病院の混雑や複数患者によるベッドの共用などが常態化して、多くの国民が十分な医療を受けられていない※2。10年後には高齢社会に突入する。

このため、「病床の不足」「病院の混雑」「医療の質の低下」といった諸課題の解決に資する技術やサービスを、ベトナムの実情に適したかたちで提供することが求められる。有効な策としては、課題を有する者と解決策を有する者が共創する「社会課題解決型ビジネスプラットフォーム」の構築が挙げられる(図)。

具体的には、介護や先端医療など重点的なテーマごとに、日本とベトナムの政府や民間企業の関係者を集め、ビジネスによる課題解決に向けたマッチングを行う場を設定する。その上で、日本が得意とする技術を活かして、民間資本活用による新たな病床の確保、医療サービスへのDX導入、医療関係者の育成などにつなげる。
[図] ベトナムにおける社会課題解決型ビジネスプラットフォームと「ハブ」の役割

3.中東では解決策のパッケージ化が不可欠

中東では2020年9月のイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)・バーレーンとの国交正常化を皮切りに、宗教対立を超えた「大中東経済圏」が形成されると期待されている※3。日本にとって中東は今後、原油などの「資源調達先」にとどまらず、商品やサービスを売り込む「有望市場」ともなり得る。中東各国での日本のイメージが総じて良いのも追い風だ。

中東の湾岸産油国では、脱石油依存やコロナ禍から経済を復興させる観点により、産業の多角化が待ったなしの状況にある。各国は国家の発展と持続可能性確保のための長期ビジョンを策定しているが、実現に至る取り組みは十分とはいえない。

例えばカタールの大気汚染防止策を見ると、汚染状況は正確に把握できているとはいえず、何をどのように改善するのかという具体的な方策も見当たらない。海外労働者頼みの色彩が強いため、持続的な運用のための人財育成も進んでいない。

現地政府に伴走しながらビジョン策定や制度構築を行うだけでは課題を解決できない。包括的な現状分析を踏まえて、解決策の実装に必要なものをパッケージ化して提供することが有効である。そのためには、実装に必要な設備・施設を提供できるメーカー、データを効率的に収集・分析できる技術をもつIT企業、施設を運用できる人財を育成する企業がコンソーシアムを組み、包括的な商品やサービスを実現することが求められる。東南アジア型のプラットフォームを構築できるほどには、企業を中心とする主体が整っていない中東では、コンソーシアム組成の方が効率的であろう。

4.課題解決を事業機会につなげるハブとして

海外での事業機会獲得には、現地の本質的課題を特定した上で解決策を示し、必要な技術や人財などをマッチングさせる「ハブ(先導役)」が必要となる。

当社は両地域での拠点開設※4を通じ、東南アジアでビジネスプラットフォームを運営するハブになるとともに、中東では解決策のパッケージ化を進めたい。社会課題解決を起点とする長期的な目線に立つ独自のアプローチによって、現地政府との橋渡し役を担いながら、日本企業とともに事業機会の獲得を目指す。

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