マンスリーレビュー

2021年2月号トピックス4経済・社会・技術経営コンサルティング

スタートアップ支援からインパクト共創へ

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2021.2.1

未来共創本部加藤 美季

経済・社会・技術

POINT

  • 社会課題解決やインパクト共創への関心はスタートアップでも高まっている。
  • インパクト戦略による提供価値やマイルストーン見直しが事業開発に有効。
  • スタートアップとメンターの学び合う姿勢が大きなインパクトを生み出す。
INCF(未来共創イノベーションネットワーク、事務局:三菱総合研究所)は社会課題解決型ビジネスに取り組むスタートアップの事業提案を支援・表彰する「ビジネス・アクセラレーション・プログラム(BAP)」 を運営してきた。6回目の2020年度BAPには過去最多150件の応募があり、影響の範囲が広く深刻さの大きい社会課題を的確にとらえ、有効な解決に結びつくような事業が多く提案された※1

予選を通過したスタートアップには、最終審査会の約2カ月前から、社会的価値や非財務価値によるインパクトの検討を軸としたメンタリングを提供する。過去5回の経験を踏まえ、今回はスタートアップのインパクト戦略を明確化するためのフレームワークを独自に開発した。当社研究員によるメンタリングを通じ、事業の成長だけでなく、社会課題解決に向けたより大きなインパクト共創への道を伴走した※2

インパクトと事業を両にらみで検討していく過程では、短期・中期・長期それぞれの視点から、社会への波及効果を最大化するべく必要な戦略を練っていく(図)。同時に、自社に蓄積するコアコンピタンス※3は何か、効率的・効果的に活用すべき外部リソースは何かなど、インパクトに対する自社の貢献や役割について議論を行う。

参加各社からは、「社会実装に向けた優先順位が分かり、事業が加速した」「目先の自社の売り上げ成長ではなく、世の中にポジティブな影響をどう与えていくかという視点から、事業を俯瞰(ふかん)的に捉え直せた」などの評価が得られた。

成功の鍵は、スタートアップとメンターが学び高め合う姿勢にある。よりよい社会に向けて同じ目線で取り組む先に、より大きなインパクトが見いだせる。BAPは審査・表彰で終わりではなく、当社やINCF会員企業との連携などアフターフォローを通じてビジネスによる社会課題解決を促進していく。解決のエコシステムは日米有識者からなる審査員にも高く評価され、応募提案のレベルアップにも結びついている。

INCFは機動力や技術力のあるスタートアップに本気で向き合うことで、これからも「未来起点のオープンプロセス・イノベーション」※4の実行に取り組んでいく。
[図] 社会へのインパクトを最大化するために(検討過程)