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2020年12月号トピックス1経営コンサルティング経済・社会・技術

「大中東経済圏」が日本企業にもたらすビジネスチャンス

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2020.12.1

海外事業本部中川 浩一

経営コンサルティング

POINT

  • イスラエルとUAE、バーレーンの国交正常化で中東経済は新局面に。
  • さらに米国でのバイデン政権誕生で、和平機運が加速する可能性もある。
  • 中東には日本企業の技術が活かせる社会課題が多く官民連携で参入を。
2020年9月にイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンがそれぞれ国交正常化に調印した。ハイテク産業が集積するテルアビブをもつイスラエルと、巨大経済ハブのドバイやオイルマネーで溢れるアブダビを抱えるUAE、金融センターであるバーレーンが結びつくことで、中東経済は新局面に入る。さらに、米国で2021年1月に誕生するバイデン政権は、同じ民主党のオバマ政権が進めていたイランとの関係改善※1などを再開させる見込みであり、中東の和平機運が加速する可能性もある。
 
日本企業にとっても、イスラエルとアラブ諸国の双方とビジネスを進めていける時代が到来したといえよう。さらに、バイデン政権の取り組みがイランへの国際的な経済制裁の解除につながれば、イランでのビジネスも再開できる(図)。このような「大中東経済圏」構想に沿って、日本企業は早急に中東事業を見直すべきである。
 
もともと中東地域はオイルマネーを背景に、富裕層が多数存在しているのに加え、1人あたりGDPも高く、ビジネスの可能性に溢れている。ただ、近年では原油価格の下落で緊縮財政を迫られているほか、コロナ禍による観光産業低迷や出稼ぎ労働者減少も起きている。こうした短期的な課題に加え、長期的には「脱炭素化」や「ポスト化石燃料」への対応が求められている。
 
中東諸国には環境問題をはじめ、食料、ヘルスケア、エンターテインメントなど、日本の文化や技術などが活かせる社会課題が数多く存在する。そして、現地では日本企業がもつ強みに対する期待が高まっている※2
 
さらに、日本政府は中東の各国政府と良好な関係を保っている。「日・サウジ・ビジョン2030」※3をはじめとした、政府間の協力の枠組みもすでに存在している。日本企業の本格進出にあたっては、このような下地も十分な支援材料になりうる。今後は、官民連携を通じて、現地の政府や企業と、入り口(戦略・計画の策定)から出口(産業や事業の構築)まで一貫して伴走する仕組みをつくれるかがポイントとなろう。それに成功すれば、欧米の競合相手とは異なる日本らしさを発揮できる。

※1:2019年7月発表した大統領選での選挙公約でバイデン氏は「イランが約束を守るなら(トランプ政権が離脱した)イラン核合意に再び参加する」意向を示していた。

※2:2020年10月に茂木外務大臣がサウジアラビアで同国閣僚と会談した際も、相手側からサウジの改革努力に対する日本の協力が重要である旨の言及があった。

※3:両国間の戦略的パートナーシップの羅針盤として2017年に策定された。

[図] 米国バイデン政権下での中東の先行き予想と日本企業への好影響

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