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2020年12月号トピックス6デジタル・イノベーション経済・社会・研究開発

汎用AIは完成前の中間段階にも投資価値あり

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2020.12.1

先進技術センター飯田 正仁

デジタル・イノベーション

POINT

  • 汎用技術(GPT)の有力候補である「汎用AI」の研究開発が世界で進展中。
  • 日本の研究開発に遅れ。一因に研究開発状況や応用事例の分かりにくさ。
  • 課題先進国の日本には有望市場も。完成前の中間段階にも投資価値あり。
蒸気機関、電気、インターネットなど社会生活のさまざまな用途に応用可能な技術は、「汎用技術(GPT)」※1と総称される。GPTを制する者は世界を制するといわれるほど社会的インパクトがあり、次世代AIとして研究が進む「汎用AI」※2もGPTの有力候補として注目されている。

現在われわれが慣れ親しんでいるAIは特定用途向けの「特化型AI」だが、汎用AIは「汎用性」(多様な用途に対応できる)と「自律性」(自ら考え行動できる)を備える点で、特化型AIとは一線を画している。ディープラーニングなど汎用的な要素技術の登場を背景として世界的に汎用AIの研究開発が進みつつある中で、日本がやや後れを取っている現状は否めない※3

日本の研究開発が遅れている理由の一端は研究者不足にある。研究者を増やすためには、実現可能性や応用可能性の提示が効果的だが、GPTである汎用AIは、完成に至るまでの研究開発状況や具体的な応用事例が分かりにくい。AIに関する議論が、直近の成果あるいは長期的な影響の両極に偏っており、中間段階の議論も大切にすべきという指摘もある※4

中間段階のいわば「汎用目的AI」(図)の例として、現在開発が進みつつある片付けロボットや生活支援ロボットが挙げられる。家事・育児・介護などさらに多様な用途に対応可能となれば、大きなイノベーションをもたらし世界に先駆けて少子高齢化が進む日本の社会課題解決に直結するだけでなく、投資先としても極めて有望である。

実際に欧米では、汎用AI完成に至るまでの中間段階の技術から回収される利益に注目した投資も重要視されている※5。日本においても中間段階で生じる成果物を投資対象とし、投資を活性化する必要がある。そのためには、投資判断の助けとなる社会実装のレベル設定や※6、レベルごとに応用事例を提示する必要があろう。投資が集まることで研究開発が進み、具体的な応用事例が増えてさらに投資が集まる。このような相乗効果によって、国産汎用AIの研究開発が進むことを期待したい。

※1:総務省「令和元年版情報通信白書」。

※2:Artificial General Intelligence(AGI)。人間と同程度の知的能力をもつAI。

※3:2017年のレポートによれば、世界で45の組織があるとされている。       
Global Catastrophic Risk Institute(2017年11月)「A Survey of Artificial General Intelligence Projects for Ethics, Risk, and Policy」。

※4:MDPI(2020年5月)「Medium-Term Artificial Intelligence and Society」。

※5:※3の論文で、「AGI profit-R&D synergy」として取り上げられている。

※6:例えば、自動運転におけるレベル0~5の設定のようなイメージのもの。

[図]AIの発展段階

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