マンスリーレビュー

2020年12月号トピックス3デジタル・イノベーション経済・社会・研究開発

次のパンデミックはサーベイランスで迎え撃つ

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2020.12.1

シンクタンク部門 統括室渡辺 毅

デジタル・イノベーション

POINT

  • ウイルス感染症はパンデミックになる前の予兆把握が極めて重要。
  • 水際対策・初動対策に活かせる早期警戒システムの構築が必要。
  • データ収集・分析・共有機能をもつ日本版感染症対策管理センターの設立を。
新型コロナウイルス感染症の拡大で、日本は混乱をきたしたものの、現在までのところ医療および経済や暮らしの崩壊はなんとか免れている。だが、仮に今回のパンデミックを乗り切ったとしても、新たな感染症は今後も発生する。新たなウイルスの発生や感染拡大の予兆をいち早く捉え、パンデミックになる前に抑え込む手だてを早急に整える必要がある。

パンデミックの予兆察知に有効なサーベイランス(調査監視)方法は日進月歩の状況だ。今回のコロナ禍では、下水を用いたサーベイランスが注目を集めた※1。そのほかにも監視カメラの画像診断※2、医療機関の血液サンプル※3なども有望視されている。これらの感染情報に関するデータを自動で収集・分析し、異常値を発見した場合にアラートを発動する「自動サーベイランスシステム」を構築する意義は大きい(図)。

その際に留意すべきは2点ある。1点目が、今後のパンデミック対策において重視されるべき「横の連携」である。サーベイランスの精度向上には、多様な分野の専門家がそれぞれの知識を活かして分析・議論することが必須要件といえる。また、国内のデータ蓄積にとどまらず、各国のサーベイランスシステムとの連携も必要となる。

2点目は収集データの取り扱い方法である。個人情報の匿名化やデータの利用許諾、提供範囲や取扱期間の設定など、データ管理におけるセキュリティ対策を徹底することが同システムを実現する上での最大の課題となろう。

今回のコロナ禍における各国の対応からは、分野横断的組織がリードする重要性が教訓として得られた※4。ならば、日本でも感染症のデータ収集・分析・共有機能を備え、サーベイランスシステムを運用する省庁横断的な日本版感染症対策管理センター(JCDC)を設立し、近い将来訪れるパンデミックに備えるべきである。

折しもデジタル庁構想が取り上げられ、省庁横断的に行政のDXを推進しようとしている。将来への布石を打つ絶妙な機会といえよう。

※1:東京都では、便として排出された新型コロナウイルスを下水からサンプリングして感染実態を把握する研究を進めている。

※2:監視カメラとサーマルカメラを主要交通ターミナルに設置して、通行する人々の健康状態を観察・診断する。

※3:採血を行う全ての機関から血液サンプルを入手して抗体検査を実施し、網羅的な感染症サーベイランスを行う。

※4:新型コロナウイルス感染症対応で後れをとった国の多くに共通するのは、パンデミックの脅威を過小評価していただけでなく、政治的な優先度が低く、科学的根拠に基づく助言が通らなかったことである。

[図] 自動サーベイランスシステムの概要

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