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2020年3月号トピックス4ヘルスケア・ウェルネス

ベトナム病院事業における日系企業への期待

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2020.3.1

海外事業本部ディン ミン フン

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • ベトナムではヘルスケア、とりわけ病院不足が喫緊の社会課題。
  • 民間資本で病院を建設・運営という事業モデルにより解決が可能。
  • 日系企業にとっても商機。ベンチャーとの協業も有力な選択肢。
ベトナムは日系企業進出数がアジアで5位※1、経済成長率も年率7.0%前後で推移している※2。日系企業にとっても、米中の覇権争いが続く中、米中双方との関係が深く成長余力の大きいベトナムの重要性は高い。しかし、経済成長に伴いさまざまな社会課題が露呈しており、特にヘルスケア分野では、病院不足が深刻さを増している。

例えば、ベトナムでは1万人あたりのベッド数は26床と、日本の同134床に比べて5分の1の水準にとどまっている※3。ベトナムの保健省直轄病院においても平均ベッド稼働率は約120%と不足傾向にある。より高い医療技術を求めて、人気の国営病院に患者が集中することから、稼働率が常時200%近くになることも珍しくない※4

これは深刻な事態といえよう。ベトナムの公的債務比率が55.5%※5に上り、政府の削減目標に掲げられている中、国営病院が自ら投資し、整備することは当面は困難である。民間資本による解決が必須といえよう。例えば、人気国営病院の隣接地に、民間資本で上位中間層向け病院を建設・運営するという事業モデルが考えられる(図)。具体的には、中央政府および地方政府とネットワークを有し、かつ病院経営に精通する現地ベンチャーと協業し、稼働率100%超の国営病院の敷地内に、良質な医療サービスを高価格帯で提供する第2病院(民営)を建設するというモデルである。

実際に、南部にあるドンナイ省の省直轄病院「ドンナイ総合病院」には、2015年にCotec Healthcare社とドンナイ省の共同出資で別棟が建設され(現在、運営中)、新旧施設間での常勤・非常勤医師の相互派遣も始まっている。こうした実例の増加はベトナムにおける病院不足の緩和に大きく寄与するだろう。

こうした状況は日系企業のビジネスチャンスにもなろう。国営病院が、土地、医師の派遣、ブランド(病院名)を貸与する一方、日系企業はベンチャーと共同出資し、ハンズオン(投資先企業への直接参画)で経営を行うことによって、現地での事業リスクをヘッジしながら、病院運営事業に参入できる。それを通じてベトナム国民が抱えている課題の解消につながる可能性があり、社会的な意義が高い事業と考えられる。

※1:前年比の増加率では6位。外務省領事局政策課「海外在留邦人数調査統計 平成30年要約版」(2018年)。

※2:日本貿易振興機構「基礎的経済指標(ベトナム)」(2020年)。

※3:世界保健機関データベース(ベトナムの数字は2014年、日本は2012年時点のもの)。

※4:経済産業省「新興国等におけるヘルスケア市場環境の詳細調査 報告書(ベトナム編)」(2016年3月)。

※5:IMF「IMF Country Report:Vietnam」(2019年7月)。

[図]日系企業によるベトナム病院事業参入のスキーム(A病院の例)

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